2016年12月02日発行 1455号

【沖縄・高江 現地ルポ/ヘリパッド建設が破壊する自然・生活/生きるために闘う人びと】

 団結まつりに来阪した沖縄県東村村議・伊佐真次(まさつぐ)さんは、基地建設によって奪われる地域の生活、自然に思いを馳せてほしいと訴えた。毎月、沖縄連帯行動に取り組むZENKOは早速、11月、高江のフィールドワークを加えた。豊かな自然と、それとともにある生活を守るため、闘う人びとに出会った。

豊かな自然を体験

 連帯行動最終日。メンバーは、高江区北部を縦断する新川川(あらかわがわ)の沢登りを体験。スタートは河口から1・5`ほど上流からだ。2`もさかのぼればダムがある。その手前にある滝を目標に往復3時間弱の行程だ。

 ガイドは高江洲義政さん。伊佐さんの紹介でつながった。5歳の時、沖縄市泡瀬から高江に移住。同郷の伊佐一家より早く高江に住んだ。造園業を営みながら、修学旅行生の自然体験学習を行っている。

 出発してすぐだった。「ハブ!!」。川岸を進むメンバーが大声を上げた。行く手の岩の上に三角頭の蛇を見つけた。しばしパニック状態。「ヒメハブだから。踏みつけなければ噛みませんから、大丈夫ですよ」。高江洲さんの説明にも動揺は続いた。

 歩行ルートが整備されているわけではない。山の木の枝から杖をつくり、水深や足場を探りながら進んだ。膝上まで水に濡れながらの本格的な沢登り。倒木をかいくぐり、苔むした岩を越え、転びそうになりながらやっと滝に着いた。「野性を取り戻した」と感想が漏れた。

 新川川は、すでにオスプレイが使用するN4パッドと建設中のN1、Hパッドのほぼ中間を流れている。木々の間から見える空を飛ぶオスプレイ。その回数は格段に増える。「高江の森は知り尽くしている」という高江洲さん。「ここは映画の撮影にも来ているところ」。言葉少なではあるが、やんばるの自然を紹介する姿は誇らしげだ。

「住民分断」の仕掛け

 豊かな自然に魅せられて、高江に移り住んだ人は多い。冬のZENKO集会(大阪)に参加する清水暁さん(1970年生)もその一人だ。

 07年5月に石川県から高江に来た。やんばるの森の中、お茶屋「山甌(やまがめ)」(15年末に閉店)に居候した。2か月後、突如ヘリパッド建設工事が始まった。地域の人びととともにN4ゲート前に座り込んだ。

 この地域には、子どもを預けるところがなく、同世代の若い夫婦が困っていた。そこで保育園を開設した。今、大宜味村(おおぎみそん)など高江以外からも子どもたちを受け入れている。

 穏やかな表情、優しい語り口。子どもたちがゆったり育っている様子が浮かぶ。だが、「芯は強い」と伊佐さんが太鼓判を押す。「ヘリパッドいらない住民の会」のテント番にも入る。木曜日の昼と日曜の晩が当番だ。

 産経新聞やネット右翼は、反対運動に地元住民は迷惑とのキャンペーンをしている。どう思うか聞いた。

 「機動隊が通行規制してもはっきり理由を言わないんです。『通れないと思いますよ』『集会をやってるようですよ』と、(通れない理由を)反対運動のせいであるかのように言うんです」。あえて誤解を生むように誘導し、住民の分断を図ろうとしているのだ。「工事を進めること自体が誤りなのに」。清水さんはそうつぶやいた。

爆音が壊す生活

 高江区は人口約150人、50世帯ほどだ。10月半ばにTBS『報道特集』のスタッフが全戸を訪問し、18歳以上の110人を対象にアンケートを行った。78人から回答を得た。反対58人、賛成1人、その他19人だった。

 オスプレイ飛行後、子どもたちに悪影響が出ていないか聞いた。「爆音にびっくりする子はいます。もっと小さい子は寝ていますが…。夜に飛ぶのが影響します」。昼夜のリズムを整えていく時期の子どもたち。良いわけがない。「オスプレイの飛行で生活ができなくなるのが心配。国民を守らない政府はおかしい」と語る清水さん。「次の世代が苦しむことに。環境に悪影響を与えることになるわけで、元の姿に戻す責任が私たちにはあると思うんです」

 豊かな自然につつまれた高江。その生活を破壊するオスプレイ・ヘリパッド建設に反対する人びとの思いは深く、強い。「ヘリパッドいらない住民の会」は、高江の住民以外にも広がっている。

 ZENKO冬集会in横浜に参加する儀保昇(ぎほ)さんは隣の大宜味村だが、やんばるの自然を大切にする気持ちは同じだ。儀保さんと同じ村で建設業を営む奥間さんは、「基地建設反対の闘いの中で、自分の仕事の意味を問いかえした」と語る。いまは防衛局工事のずさんな実態を具体的に暴き、反対運動の中心的存在になっている。「全国から講演依頼があるんですが、現場を離れるわけにはいきません」

 北部訓練場返還日程を公表した安倍政権。だが、現場の工事は順調ではない。たとえ完成しても、使わせない。オスプレイは飛ばさせない。粘り強く闘う人びととのネットワークをより強固に。沖縄連帯行動の参加者は決意を新たにした。

          (T)



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