2016年12月23日発行 1458号

【「総合区」で「大阪都構想」復活画策/民意に逆行する維新/公明取り込み再住民投票狙う】

 日本維新の会(維新)は、昨年5月の住民投票で否決された「大阪都構想」を復活させようと企んでいる。

 維新の松井大阪府知事と吉村大阪市長は、議会で過半数を得るために公明党提案の総合区案に賛同し、「都構想」の特別区と合わせて8月から大阪市内24区で住民説明会を開始した。松井知事と吉村市長は、今年度中に24区を合区(6または8、10区に)する総合区案を1案に絞り、同時に2月議会に「都構想」の特別区協議会(法定協)設置議案を提出。副首都推進局で総合区案を、法定協で特別区案を検討させ、市民に総合区か「都構想」特別区かの選択を迫るため、2018年秋には「都構想」特別区設置の住民投票を再び行うという。

 総合区とは何か。地方自治法改定(14年)により、政令指定都市の条例で現在の区に代えて設けることができるようになった制度だ。独自の予算と人事権を持つ総合区長が、その区に関する行政をほぼすべて行える。公明党は「住民の声をより身近に市制に反映」と言うが、総合区は「行政の円滑な運営を確保するため」(地方自治法252条20の2)とされ、そのまま住民自治強化が進むものではない。

 現に、政令指定都市20市のうち導入に前のめりなのは大阪市だけ。ほとんどは「区ごとにサービス水準に差が出る」「現行で対応可能」と否定的だ(5/15毎日)。

 ではなぜ、維新が推進するのか。それは「都構想」復活のためだ。公明党が推進する総合区案を受け入れることで議会の過半数を制し、引き換えに「都構想」法定協設置や二者択一の住民投票を実施しようとしている。しかも、「都構想」特別区がとん挫したとしても、総合区を都構想もどき≠ニして活用し、財界のための市民の税金ぶんどり」に道を開くためだ。

都構想もどき≠フ危険性

 総合区は、区長公選制や独自の区議会をもつこと等を除けば、区長が強力な権限を持ち行政を実施する点で「都構想」の特別区と似ている。総合区を都構想もどき≠ニすることは可能だ。

 橋下(前大阪市長)の総合区の持論はこうだ。「都構想では5区案を出した。総合区は24区を合区して再編することが前提。総合区では、サービス差が出る。サービスが同じだったら総合区の意味がない」「カジノ誘致、うめきた開発(大阪駅北地区再開発)はそのまま進める。(財政調整について)総合区も(予算)分捕り合戦になる」(15年5/28記者会見)。

 維新が統治機構改革を基本政策のいの一番に挙げる。橋下は、明らかに統治のための機構として総合区を使おうとしていた。吉村もこの路線を踏襲する。総合区は合区ありきで進め、「住民自治」を口にしながら24区住民説明会では特別区設置に肩入れした発言を繰り返し、区民の意見は聞こうとしない。吉村の「住民自治強化」は全くのうそっぱちだ。

 行革で切り縮めた市民サービスを区の仕事として条例化し、少ない予算をあてがって合区して再編した総合区に丸投げする。行革・民営化で市の資産と税金を奪い、府市調整会議で方向の一本化を図れば、カジノ誘致、うめきた開発、はては万博まで大規模事業に巨額の税金をつぎ込むことができる。まさに「都構想」にかけた狙いと変わらないものとなる。

 住民自治の拡充や市民の意見反映は、どの制度を導入するかではなく、市民が主体的に関われるようにする行政の姿勢の問題だ。基本条例などを制定して行政の基本姿勢を確定し、そのもとで制度設計をすることが必要なのだ。財界のための税金ぶんどりへ、大阪の自治を壊し市民生活をどん底に突き落とす「都構想」を復活させようとする維新にその姿勢があるはずもない。

 市民がはっきりノーの民意をつきつけた「都構想」特別区も「都構想もどき」の総合区もいらない。市民生活を第一に公的責任を拡充し、「市民のためにとことん税金を使う」改革こそ問われている。
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