2016年12月23日発行 1458号

【みる…よむ…サナテレビ423/2016年12月10日配信 イラク平和テレビ局in Japan/イラクで子どもの虐待はなぜ起こるのか?】

 2016年10月、サナテレビは家庭内の子どもの虐待について、市民にインタビューを行った。イラク社会では、暴力が増加し生活が厳しくなる中で、家庭内暴力も増えている。市民たちはこの問題の背景と解決策を真剣に考えている。

 現在のイラクでは、IS(「イスラム国」)の暴力支配と対市民テロ、政府軍・米軍による無差別爆撃で日々多くの人命が奪われている。政府の緊縮政策によって賃金の未払いが続き、失業者が増え、若者は就職する展望がない。こんな社会では、弱い立場の人たちが差別や虐待の対象になりやすい。その一つの例が子どもに対する家庭内暴力、虐待である。

 最初に登場する法科大学の女子学生は「イラク刑法にも家庭内暴力を防止する条項がある」と言う。近代国家として当然だが、「実際には守られていないことが多く、部族法が継母(ままはは)による子どもに対する暴力などを容認している」とイラク社会の問題点を批判する。

 もう一人の男子学生は「イラクには子どもを保護する法律はない」と指摘する。子どもをはじめ市民の人権を守る法律や社会制度が十分に整っていない。問題はそれだけにとどまらない。この学生は「結婚した若い女性が夫を失い、貧困のために、子育てをどうすれば良いのか分からず、結局は子どもが犠牲となる」という事例を挙げる。

社会からの抑圧が背景

 個人の問題はもちろんあるとしても、継母が子どもを虐待してしまうまでに追い詰める社会状況を見なければならない。

 メディア関係者は「私たちは女性を非難するだけではなく、そんな社会に責任を持ち、変革しなければならない」と語る。別の市民活動家は「女性が子どもを虐待するように追い立てる世間の圧力のことを知っておかなければならない」と主張する。

 イラクでは、ISやアバディ政権が宗教支配や部族による支配を強め、街には安全がなく、仕事もない状況が続く。社会からの抑圧が、女性を子どもの虐待へと追い立てている。サナテレビは、こうした社会背景をとらえた上で社会を変革しようと訴えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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