2016年12月30日発行 1459号

【辺野古・高江 オスプレイ撤去を 墜落に県民の怒り爆発 「これが法治国家か」】

 米軍普天間飛行場・海兵隊所属の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが12月13日午後9時半頃、名護市東海岸安部(あぶ)の海岸に墜落した。通称ジュゴンが見える丘≠ゥらすぐの南方を見下ろした所だ。機体は、陸地から約80bの浅瀬に落ち、胴体や翼がバラバラに分解し大破した。

墜落と認めない政府

 やはり欠陥機オスプレイは墜落した。恐れていたことが現実に起こった。

 驚くべきことに、墜落現場付近を偵察していた別のオスプレイ1機も普天間飛行場に戻る際に胴体着陸の事故を起こしていた。7日には米軍岩国基地所属のFA18戦闘攻撃機が高知沖に墜落、操縦兵士が死亡する事故まであった。1週間以内に米軍機による事故が立て続けに起きている。

 12月14日午前、登庁した翁長雄志(おながたけし)沖縄県知事は、記者団に「これが法治国家か」と吐き捨てた。知事のもとを訪れた川田司外務省沖縄担当大使と中嶋浩一郎沖縄防衛局長に対し、「大破の状況から事故は墜落だと認識している。怒りを禁じ得ず、直ちに飛行停止とオスプレイの配備撤回を求める」と抗議した。

 翌15日、翁長知事は稲田朋美防衛相を訪ね、相次いだ事故を起こす同機を「欠陥機だ」と指摘。改めて配備撤回を求めた。稲田は「防衛省としても情報収集、その公表、安全確認にしっかりと取り組みたい」と述べたが、事故は「不時着水」とし、墜落とは認めなかった。

 事故後の米軍と日本政府関係者からの発言はあきれるばかりだ。在沖米軍トップのローレンス・ニコルソン四軍調整官は「住民や県民に被害を与えなかったことは感謝されるべきだ」と述べ、県からの抗議に机をたたいて不快感を示したという。若宮健嗣(けんじ)防衛副大臣は、安慶田(あげだ)光男副知事からのオスプレイ配備撤回要求をその場で拒否。さらに「辺野古移設を最優先して進めたい」と語り、墜落事故現場付近では「パイロットの判断で人けがない場所に落ちたんですね」と操縦士をほめるかのように発言した。

 首相官邸では、翁長知事が杉田和博官房副長官に12月22日の米軍北部訓練場「返還式典」開催中止を求めたが、「開催したい」と知事の要請を即座に拒否した。

何を祝う式典か

 県民の事故への不安が的中し、これだけの大事故を引き起こしたことで、日米両政府による沖縄へのさらなる基地負担強要の動きが少しは鈍るかと思ったが、全く違った。

 墜落2日後の15日、米軍キャンプ・シュワブ辺野古陸上部の隊舎2棟の建設工事が再開された。

 12月22日午後4時、名護市の万国津梁(しんりょう)館で米軍北部訓練場「返還式典」が強行される。沖縄県は翁長知事をはじめ県庁職員の誰一人として出席しない。事故の影響で出席予定だった宮城久和国頭(くにがみ)村長も欠席を表明した。ところが、菅義偉(すがよしひで)官房長官は予定どおり開催すると明言した。地元自治体関係者も出席しない記念式典とは、一体誰が何を祝うのか。

 市民団体は、式典当日午後2時から会場を包囲する抗議行動を展開し、午後6時からは名護市内で抗議の県民集会を開催する。

 また、辺野古訴訟上告審で、最高裁判所は判断変更を行う際の弁論を開かず、12月20日、翁長知事の埋め立て承認取り消し処分を違法とする判決を出す。司法は、沖縄県の弁論の場さえ奪い、政府の思い通りに判決を言い渡す。県幹部は「この国には三権分立はないのか。もうこの国で裁判なんかできない。かつてと違って県民が怒っていることを東京はわかっていない」と憤る。

シュワブ前に抗議900人

 安倍政権の暴走は止まらない。最高裁判決を錦の御旗≠フように辺野古新基地建設工事の再開強行を狙う。しかし、沖縄最大の平和団体「基地の県内移設に反対する県民会議」に結集する多くの市民は、高江も辺野古も、と二つをつないで連日の闘いに立ち上がっている。12月17日の高江N1ゲート前一斉行動後、参加者は辺野古キャンプ・シュワブゲート前のオスプレイ墜落緊急抗議集会に合流。2日前の呼びかけに900人が集まった。海上ではオスプレイ事故処理を続ける米軍への抗議も並行して行われている。

 「決して諦めない」。安倍政権の暴虐に抗して県民は闘い続ける。     (N)



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