2016年12月30日発行 1459号

【2016年12月17日配信 イラク平和テレビ局in Japan 大学授業料値上げ―私立より高い公立/犠牲者は誰?】

 イラクのアバディ政権は、公立夜間大学の授業料を大幅に引き上げようとしている。2016年10月、サナテレビはこの問題についてバグダッド市民にインタビューを行った。厳しい経済状況と治安状況の中で学生の生活を直撃する学費値上げに対して、市民はどんな反応を示すだろうか。

教育システムが崩壊

 ある詩人がインタビューに登場する。その友人の娘は、経営経済学部の学生で150万ディナール(約12万円)の学費を支払うよう求められている。イラクの物価、賃金の状況からすれば、かなり高額の出費となる。しかも、公立大学の学費が私立大学よりも高くなる異常な事態だ。

 アバディ政権は、石油価格の下落を口実にして庶民いじめの緊縮政策を進めている。大学の学費値上げはその一環なのである。

 メディア関係者によると、美術大学の学費が150万ディナール、工業大学では300万ディナール(約24万円)にのぼる。すべての市民に教育費負担が重くのしかかっている。

 芸術家の若者が訴える。「大学で修士号を取得したが、まともに働く場がなく、生活に困っている」。その若者は「(国民の教育を担うはずの)教育省に教育課程の書籍などの専門書さえまともにない。学生の90%は勉学を終了するだけのお金を持っていない。教育システムが崩壊している」と言うのである。

 2003年の占領以前、イラクでは小学校から大学まで授業料は無料だった。しかし、その後の歴代政府は教育・福祉を切り捨てて緊縮政策を進め、ついには公立大学でも高額の授業料を取ろうとしている。

日本、米国も共通

 日本や米国なども同じような状況にある。大学の授業料を払うために有利子「奨学金」や教育ローンに頼らざるを得ず、大学在学中に何百万円もの借金を抱えることが、日本でも大きな社会問題になっている。

 高等教育をはじめ教育費の負担増は、グローバル資本のあくどい支配の一環であり、全世界的な事象だ。サナテレビはこうした実態を知らせ、グローバル資本の利益のための値上げに反対しようと呼びかけている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



 
ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS