2017年01月06日・13日発行 1460号

【奨学金問題を考える/ZENKO広島が学習講演会/奨学金ホットライン実施めざす】

 12月17日、広島市内で「奨学金問題を考える学習講演会」(主催はZENKO・広島)が開かれた。今年の6月例会でDVD『学生たちは今声をあげる―今こそ給付型奨学金の実現を』を視聴したのがきっかけとなり、さらに学習を深めようと今回の講演会が企画された。

 講演した奨学金問題対策全国会議幹事の伴幸生さんは、憲法と奨学金の関係に触れ国民の生存権は国に保障義務があること、教育を受ける権利の条文から、高等教育も含めすべての人の全面的な発達のために教育の機会均等原則は国の責任で生涯にわたって保障されるべきであることを強調した。

 1980年代以降の新自由主義政策の進展で労働者の多くが非正規化され労働分配率が下がり続けているのに逆比例して、有利子の奨学金を受けざるを得ない学生が拡大している実態が明らかにされた。日本の大学は国際的にずば抜けて高い学費であるにもかかわらず給付型の奨学金が存在しない異常な状況であり、現在の奨学金制度は、「教育事業」ではなくはっきりと「金融事業」になっている。日本学生支援機構が金融資本による貧困ビジネスのためのトンネル≠フ役割を果たしていることが指摘された。

 集会に参加した学生からもリアルな実態が報告された。私立大学に通う3回生は「1種と2種併せて月額8万円の奨学金を受けている。進学するのに学生支援機構の奨学金を受けるのは当たり前だと思っていたし、周囲の友達もそんな感じだと思う。高3の時、先生からは『月々の返済を低く抑えた方がよい』くらいのアドバイスしかもらえず、深く考えてこなかった。今回、とても問題のある制度であることがわかった」と語った。

政策変更を迫る

 現在、政府与党は高まる批判に押され、2017年度から給付制奨学金の試験的導入を言い始めている。しかしその内容たるや、(1)来年度は「下宿私大生」「児童養護施設退所者」などに絞り、(2)再来年度「国公立大・下宿」「私大・自宅」3万円、「国公立大・自宅」2万円、「私大・下宿」4万円の支給、しかも、全国2万人限定で厳しい成績要件をつけて各高校に人数を割り振る。到底「給付型」とは言い難いものだ。

 企業が溜め込んだ総額300兆円と言われる内部留保のわずか1%に課税するだけで、国公私立すべての学生の学費を無償化できる。ZENKO・広島は、学習講演会を踏まえて年明けに広島でも奨学金ホットラインを実施し、本格的な給付制奨学金の導入を求める声を広げ、政府に政策変更を迫っていく予定だ。

(ZENKO・広島 日南田成志)

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