2017年01月06日・13日発行 1460号

【福島原発事故は続いている/避難者に住宅を 賠償を/「被災者に住宅」は行政の責任/避難当事者が福島県交渉】

 区域外避難者への住宅無償提供打ち切り問題で、福島県は支援策の重点を民間賃貸住宅の家賃補助から、受け入れ自治体での公営住宅確保に移行させた。しかし、相変わらず受け入れ先任せのため自治体によってばらつきがあり、物価の高い都市部での住宅確保が問題になっている。

 優先入居枠を設定した自治体でも、世帯要件・収入要件が壁になって優先枠にすら応募できない世帯が生まれ、現行公営住宅法に基づく対応の無理が浮き彫りとなった。

 県は今後の方針を1月以降の戸別訪問再開に置き、国もそれを見守るとするだけ。新たな制度・施策の提示がない限り、個別困難事例の対策処理で終わる。やむを得ず民間賃貸住宅を探すしかなく、一気に貧困に陥る世帯が出てくる事態が予測される。

 支援継続・住宅提供延長を求める41自治体からの意見書等提出、被害者団体の対政府・県・受け入れ自治体交渉により、家賃補助収入要件の緩和、雇用促進住宅280戸枠の設定、国家公務員宿舎・雇用促進住宅の継続使用(ただし有償)などの譲歩策を出させてきたが、まだ半数が行き先を決められていない。

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 住宅提供打ち切りまであと3か月に迫った12月21日、ひだんれん(原発事故被害者団体連絡会)など被害当事者4団体による福島県交渉が行われた。

 訴訟原告・避難者との面談を拒絶し続ける内堀雅雄知事に抗議し、2500世帯以上の住宅確保の見通しすら立たっていない(第2回戸別訪問の結果)責任を突きつけた。「一人ひとりに寄り添う」とする個別訪問のうそを追及し、今の住宅に住み続けたい、公的住宅に入りたいと希望する避難者数把握のための意向調査の実施を求めた。

 東京に避難した熊本美彌子さんは「都営住宅の優先入居枠300戸の募集があったが、内定したのは192世帯。都内717世帯のうち500以上の世帯が現在決まっていない。今後も戸別訪問をするというが、新たな策がない状態で戸別訪問されても“出ていけ”というプレッシャーにしかならない」と訴える。

 福島県は、今後の避難者の住居は民間賃貸が基本、困難な条件の人にだけ公営住宅を確保するというスタンス。だが、原因は人災であり、希望する避難者全員に公的住宅を確保することは行政の責任のはずだ。そこが交渉で詰め切れていない。県生活拠点課は「病気や障害、転校のリスクがあり、いじめられている方もいて、その事情をおうかがいしながら受け入れ県と調整する」とし、特例扱いを重点に今後の戸別訪問を行うつもりだ。

 神奈川に避難する村田弘さんは「特別の事情を聞くのは当然だが、それ以外にも出られない人がいるわけで、その方への対応はどうするのか」と迫る。生活拠点課は「正直、東京都は住居費が高額でなかなか住居を求めるのは難しいのも知っている。東京都と調整したい。国家公務員宿舎は使用料を払っても住みたいという声も聞いているので、継続できないか調整する」と前向きな姿勢は見せたが、意向調査の実施については、公的住宅を求める具体的な数字が明らかになるため、明確な回答をしなかった。

 このような中、1月6日には都内で「原発避難者裁判を準備する会」の結成集会・記者会見が予定されている。今のままの住居に住み続ける、引っ越しできない避難者と支援者らが共同し、一人も路頭に迷わせないと、裁判も辞さない運動を構える。

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