2017年01月20日 1461号

【安倍「働き方改革」のでたらめ 「同一労働同一賃金」案は格差合法化】

 安倍首相は12月20日、「働き方改革実現会議」を開き、「同一労働同一賃金」についてガイドライン案を示した。それは、安倍の「同一労働同一賃金」が格差固定の合法化、正規雇用の破壊を狙うものでしかないことを示した。

本来は格差をなくす原則

 前提として、同一労働同一賃金の原則とは何か。

 欧米では、経営団体・企業と産業別組合との間で結ばれる労働協約で技能ランク別、職種別賃金が決められる。具体的職務名を列挙した技能ランク(欧州)や仕事の一つひとつ(米国)に時間給、週給または月給額が明記される。

 これが本来の同一労働同一賃金だ。仕事が同じであれば、企業ごとの収益や個人の働きぶりで賃金格差の生まれる余地が狭いところに特徴がある。個々の労働者の仕事領域が社会的に定義され、日本企業のように「柔軟」に働かせることはできない。

 日本には、技能ランク、職務、仕事に関する社会的な定義(労働の社会的格付け)がない。仕事上必要な能力は、個別企業ごとに労働者に対する要請として現れるだけだ。賃金などの処遇は、個別企業による個人別評価で決定される。その評価基準も「柔軟性」「潜在能力」「忠誠心」「人格」など抽象的だ。結果として、企業規模、性、企業への忠誠心の有無、雇用形態などによる不合理な差別が蔓延しているのが実態である。

賃金格差実態を容認

 今回のガイドライン案は、こうした日本の格差実態を解消するものではなく、ただ合法化するだけである。

 同一労働同一賃金は、人権保障の観点が出発点だ。性別、人種などの違いを理由とする賃金差別を禁止する原則が根底にある。EUは、1997年「パートタイム労働指令」などで雇用形態を理由とした賃金格差も禁止している。

 ガイドライン案は、欧米の同一労働同一賃金原則に不可欠な労働の社会的格付けに触れもしない。多重下請の収奪構造で生まれた大企業―中小企業の賃金格差は放置されたまま。同一企業内における同一労働同一賃金の保証については一言もなく、女性に対する差別賃金にも言及しない。

 では、ガイドライン案は何を打ち出したのか。

 案は言う。「無期雇用フルタイム労働者(正社員)と有期雇用労働者またはパート労働者(非正規)は…賃金の決定・ルールの違いについて、『職務内容』『職務内容・配置の変更範囲』『その他の事情の客観的・具体的な実態』に照らして不合理なものであってはならない」

 案は、この考え方で「問題とならない例」を挙げる。

 「定期的に職務内容や勤務地変更がある無期雇用フルタイム労働者の総合職であるXは、管理職となるためのキャリアコースの一環として、新卒採用後の数年間、店舗等において、職務内容と配置に変更のないパートタイム労働者であるYのアドバイスを受けながらYと同様の定型的な仕事に従事している。会社はXに対し、定型的な業務における職業訓練・能力に応じることなく、Yに比べ高額な基本給を支給している」

 つまり、新入社員Xには将来の管理職としての役割期待があるから、その時点でパート労働者Yと同一労働(同一というより見習い労働)をしていても、Yより高額な賃金の支給は「合法」。「職務内容・配置の変更範囲」が同じでなければ格差をOKとして正社員と非正規労働者の賃金格差を固定化するのがガイドライン案の本質だ。

正規雇用破壊と一体

 一方で安倍政権は「限定正社員」制度普及を打ち出している。早速、ユニクロや日本郵政、スターバックスなどが非正規社員を地域限定正社員とする制度を取り入れた。しかし、年収は約250万円と低額に抑えられたままだ。

 ガイドライン案が明らかにしたのは、有期雇用やパート労働者の同一賃金の対象はこうした低賃金の「限定正社員」等に限られるということだ。

 派遣労働者は、派遣元の責任で、派遣先の正社員と「職務内容・配置の変更範囲」が同じであれば均等待遇しなければならないとする。しかし、そもそもそんな派遣労働者がいるはずがない。

 安倍政権は、正規雇用を破壊して低賃金の限定正社員に置き換え、増大する非正規労働者を従来同様の低賃金で働かせる。「これが同一労働同一賃金だ」と居直る論理を示したのがガイドライン案だ。

 この格差固定策動を打ち破るのは、最低賃金1500円運動の強力な推進である。

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