2017年01月27日 1462号

【みるよむ(425) 2017年1月14日配信 イラク平和テレビ局in Japan モスル避難民の苦しみ】

 イラク政府軍や米軍がイラク第2の都市モスルの奪還をめざしてダーイシュ(「イスラム国」)と激しい戦闘を続ける中、数十万人の避難民が出ている。2016年11月、サナテレビは、バグダッドの市民にモスルの避難民の受けている苦しみについてインタビューを行った。

 アラビア語の略称でダーイシュと呼ばれている「イスラム国」は、現在もイラクのモスルやシリアの主要都市を暴力支配し、市民を殺し、苦しめ続けている。イラク政府軍・米軍は攻勢を強めているが、市民の被害をかえりみない無差別攻撃が多い。シーア派勢力によるスンニ派住民への虐待、殺害も起こっている。

 200万人都市のモスルから戦火や虐待を逃れて多数の避難民が首都バグダッドや各地に避難している。ところが、イラクのアバディ政権の難民支援策はまったく不十分だ。インタビューに答える女性は「避難民には何の援助もないし、物資の支援もありません」と批判する。子どもたちが一番の被害者だろう。

 別の市民は2年半前から避難民に対する支援を政府に要求してきた。食料も、水も、まともな住居も保障されない数十万人かそれ以上の避難民が政府によって実質上放置されてきた。

 ダーイシュの支配が長期化する中で多くの困難な問題が起きている。モスル攻防戦では「彼らは家の中にも地面にも地雷を仕掛けている」という。イラク政府軍との戦闘で「市民を人間の盾に利用している。若者も、老人も、女性も犠牲になっている」。

宗派対立煽り支配

 さらに、ダーイシュによって強制徴集された人たちがいる。ダーイシュから解放された地域では、イラク政府の情報当局に密告され、犠牲になる市民が出ている。背景にシーア派中心のアバディ政権がスンニ派を攻撃し支配しようという意図が存在する。

 こんな状況に対して、市民はシーア派やスンニ派の違いに関係なく「平和的な共存」をしてきた歴史をふまえて批判する。サナテレビは、ダーイシュによる暴力支配にも、政府による無差別攻撃や新たな市民虐待にも反対し、市民の命と暮らしを守る闘いを進めようと訴えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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