2017年02月03日 1463号

【残業代不払いを許さない/国際自動車タクシー労働者 1・31最高裁闘争へ/残業しても賃金総額変わらず/全労働者の問題だ/〈寄稿〉首都圏なかまユニオン委員長 伴 幸生】

長時間労働を問う

 2012年5月、全国際自動車労組(首都圏なかまユニオンに加盟)の組合員14名は、「残業代ゼロ」の歩合制賃金に異議を唱えて不払い残業代等を請求する第一次訴訟を提起した。この闘いは15年1月28日、東京地裁民事11部で「労働基準法37条の時間外労働規制の趣旨に反し、民法90条(公序良俗)違反により無効」とする原告勝訴の判決を勝ち取り、東京高裁も同様の結論を出した。

 一次訴訟勝訴を受けて取り組んだ第三次訴訟は、178名の組合員が原告となって約3億円の不払い残業代等を請求する訴訟となり、第四次訴訟も立ち上がっている。

 しかし、一次訴訟後の不払い賃金支払いを求める第二次訴訟で15年10月8日、東京地裁民事19部(清水響裁判長)は原告の請求を棄却する不当判決を言い渡した。「歩合給のもとで労働の成果を踏まえた賃金の算出方法をどのように定めるかは当事者の自由」で「労基法37条は歩合給の算出方法について規制している規定ではない」とした。歩合給以外の賃金計算で割増賃金を控除することも可能となり、安倍政権が狙う「残業代ゼロ」の先取りだ。その控訴審判決は2月23日に出される。

 一方、第一次訴訟上告審で最高裁は、会社側の上告を棄却した上で上告受理申立てを一部認め、口頭弁論期日を1月31日と指定した。労基法が割増賃金を定める趣旨は、使用者の負担を重くし長時間労働を抑制するためだ。過度の長時間労働が命さえも奪うことは、電通「過労自死」事件でも明らかだ。政府・厚生労働省も電通事件の重大性を無視できず過去1年間の会社ぐるみの長時間残業の実態調査を進める中、最高裁が「残業代ゼロ」「長時間労働」に歯止めをかける判断を示すのか否かが問われている。

労基法を骨抜き

 タクシー業界では、長年にわたって歩合給の計算で残業代など割増賃金が差し引かれ実質的に残業代が支払われない「残業代ゼロ」制度の実態がある。形式的には割増賃金を支払うが、歩合給計算で同じ金額を控除する労基法違反が横行している。第二次訴訟の清水判決で示された判断が確定することになれば、業界で横行する「残業代ゼロ」の歩合制容認にとどまらず、運輸業界をはじめ全産業に「残業代ゼロ」を促しかねない。

 清水判決は根拠もなく「残業手当等を控除する部分が公序良俗に反するというべき事情を認めることはできない」とし、「賃金規定は(多数派労組との)労使の利益調整の結果を適正に反映させたもの」とまで踏み込んだ。この判断は、人間らしい生活を営むための労働条件を強行法規(それに反する当事者間合意を認めない)によって保障する労基法の立法趣旨を解体するものだ。「契約の自由」を盾にした脱法行為容認を決して許してはならない。

残業代ゼロ先取り

 安倍政権は「同一労働同一賃金ガイドライン案」をまとめた。雇用形態の違いだけで待遇に差をつけることを「原則禁止」とするが、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間に能力や業績、成果など一定の違いがあれば格差を容認する。実効性もなく現状の格差を固定化するものだ。また、今通常国会で、8時間労働制を破壊する「残業代ゼロ」の高度プロフェッショナル制度や裁量労働制拡大などの労基法改悪を狙う。さらに、解雇自由化(不当解雇の金銭解決)と「雇用されない働き方(請負)」を広げ、際限のない非正規雇用拡大ももくろむ。

 放置すれば、非正規雇用をなくすどころか、正規雇用を解体して総非正規化社会となってしまう。最高裁で勝利判決を勝ち取り、「残業代未払い・長時間労働」を社会からなくそう。

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◆1月31日(火)行動予定

◇12時最高裁西門前集合、宣伝行動◇13時前後に傍聴抽選◇13時半〜口頭弁論(第3小法廷)、宣伝行動継続◇15時(予定)〜報告集会(参院議員会館B109会議室)



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