2017年02月03日 1463号

【もんじゅ西村さん遺品訴訟が結審/「自殺」説の非合理性 明らかに】

 動燃(動力炉・核燃料開発事業団、現日本原子力研究開発機構)職員だった夫、西村成生(しげお)さんの死の真相を究明したい、と妻トシ子さんが起こした遺品返還請求訴訟が1月16日、東京地裁で結審した。

 95年12月の「もんじゅ」ナトリウム漏れ事故の現場ビデオを動燃が改ざん・隠ぺいした問題で内部調査を担当させられた成生さんは翌1月、「ホテル8階から飛び降り自殺」とされる謎の死を遂げる。この日の口頭弁論に原告弁護団は、「成生さんは自殺」説の非合理性を余すところなく明らかにする最終準備書面を提出した。―

*遺体には、地上30bの高さから固い地面に落下した際に発生する破壊的損傷が皆無。

*死体検案調書の死亡推定時刻(午前5時頃)は、監察医が遺体の深部体温を計測することもなく警察官から聞いた情報をそのまま記載したにすぎない。病院に残されていたデータをもとに法医学上確立された手法で推定すると、午前2時±1時間程度。

*3通の「遺書」に書かれた数字には、時分の表記における成生さん独特の書き癖が見られず、逆に成生さんにはない特有の書き癖がある。トシ子さん宛て「遺書」の文章はよそよそしく紋切り型で、奇異なことに、間近に控えていた長男の結婚についてひと言の言及もない。―

 大切な遺品を返してほしい。遺族の願いをはねつけてきたのは、「自殺」扱いの虚構が暴かれるのを恐れたからだ。ナトリウム事故で火が付いたもんじゅ批判を鎮静化させ、巨額の資金が絡む利権の温存を図る。成生さんはそのための生け贄(にえ)にされたのだ。

 トシ子さんは法廷で、8ページの陳述書を3ページに短縮して読み上げた。―

 警視庁中央警察署は初動捜査を怠り、犯罪捜査規範や検視規則を厳守せず、自殺事件と認定してしまった。中央署が報道機関に発表した内容はメディアを効果的に制し、その後長年続いている。

 元警察官3人の証言から捜査の異常さが浮かび上がる。ホテル室内の実況見分をしていない、遺体発見現場の遺体写真がない、遺留品引渡書の手続きがない、 等々。

 「衣類の原形がなく大便が飛び散り…」と説明すると西村さんは思い出したなど、勝手な作り話と酷(ひど)い証言ばかりで呆(あき)れ果てる。

 捜査機関は犯罪捜査、写真を含む証拠の開示と遺品返還の責任を公務として担うことにその存在意義がある。―

 弁論終了後、酒田芳人弁護士は「早々に裁判が打ち切られるのではと危惧していたが8回続き、この種の裁判では行われないこともある証人尋問を実施できた。警察が当時何をしていたのか、成生さんが亡くなられた周辺の出来事を明らかにさせた」と評価。もんじゅ廃炉決定をめぐってトシ子さんは「もんじゅ延命のために一人の人間がなくなり、メディアを抑えつけた。この裁判で警察官の尋問が行われなければ、来年度ももんじゅ存続の予算が付いていたかもしれない」と話した。

 判決の言い渡しは3月13日午後1時15分。

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