2017年02月10日 1464号

【全世界500万人が反トランプデモ/むき出しの新自由主義に反撃】

 ここ数十年の米国大統領の中で、就任時の支持率の低さと式典参加者の少なさで際立ったドナルド・トランプ。抗議行動は米国内だけでなく全世界で湧き起こった。その原因は、女性差別・人種差別発言にとどまらない。人権擁護も環境保護も資本の利益にならないことは「きれいごと」として投げ捨てる新自由主義政策の最も乱暴な現れに、市民が反撃を開始したのだ。

すべての人権を守る闘い

 トランプに対する大規模な抗議行動は、2015年6月の大統領候補者宣言でメキシコ移民を犯罪者呼ばわりした時から始まっている。選挙結果が出た昨年11月は途切れることなく毎日米国内のどこかで抗議行動が行われた。

 就任式前の土曜日(1/14)、首都ワシントンをはじめ主要都市で抗議行動が取り組まれた。「人種差別のトランプ政権をくい止め、始まる前に考えよう」などのプラカードが掲げられた。就任式の前日(1/19)、そして当日にも各地で抗議集会・デモが取り組まれる。サンフランシスコでは3千人以上が人間の鎖をつくった。東京、大阪でも在日米国人を中心にデモが行われた。

 翌21日には「壁ではなく橋をかけよう」と「女性の行進」が呼び掛けられ、ワシントンDC100万人以上をはじめ米国内では300万人が、全世界で500万人が参加した。この行動は、選挙結果が出た翌日に発せられた個人的な呼びかけがあっという間に400にも及ぶ市民団体に広がり、81か国、670か所以上で取り組まれた(主催者ウェブサイトなど)。

 参加者が掲げるスローガンは、女性差別に関するものだけではなかった。「女性の行進」主催者が掲げた19項目にわたる統一原則が多くの人々の共感を得た。

 「女性の権利は人権そのものであり、人権は女性の権利である」から始まり、障害者・移民などの人権、自然環境の保護や宗教の自由、労働者の権利などが記され、最後に「戦争を止め、世界中の人びとが平和のうちに暮らせなければ、これらの目的は達成されない。そのために運動する」と結んでいる。

 戦争を止めるとは、政治的、社会的、経済的システムにより権力を維持拡大している富裕層がさらなる富と権力を求めるために引き起こす直接的・間接的侵略行為を止めることだ。全世界の市民がこの呼びかけに応えた。

乱発大統領令

 実際、トランプが就任直後から乱発する大統領令は、パフォーマンスと片づけることのできない内容だ。トランプがやろうとしていることは、間違いなく1%の富裕層がさらに利益を手にするためのものだからだ。選挙期間中は反トランプを口にしていたウォール街が手のひらを返したようにトランプを持ち上げていることが証明している。

 「トランプ氏の政策は市場にとって好ましい」とゴールドマン・サックスの最高経営責任者リオド・ブランクファインはその勝利を歓迎した。トランプが「金融規制強化法」(ドッド・フランク法)の廃止に言及したからだった。同法は、08年のリーマン・ショックによる経済危機を教訓に、金融機関の財務状況を監視し、過剰な投資リスクから消費者を守ることなどを目的としてオバマ政権下で制定された連邦法だ。

 1月23日の企業経営者との会談の中では、「規制全体の75%はカットできると思っている。あるいはもっと」と規制撤廃に言及している。金融界が期待するのは4月に施行予定の「受託者責任ルール」の緩和だ。個人の退職金運用のアドバイザーに課す「クライアントの最善の利益のみを基準として行動する」基準を緩和することで、ハイリスク金融商品の売り込みが可能となるのだ。

 トランプが20日に発表した基本政策では「世界で最も高い米企業の法人税率を引き下げる」とした。トランプは選挙期間中から、連邦法人税率を35%から15%にまで下げると明言している。

 24日の大統領令は、オバマ政権下で停止されていた2件の石油パイプラインの建設を解禁したものだった。ノースダコタ州とイリノイ州を結ぶダコタ・アクセス・パイプラインは先住民スタンディングロック・スー族の水源であるミズーリ川を横断、石油漏れの事故など、水源汚染が懸念されている。石油・ガス資本を支援するトランプ政策のひとつだ。

 「メキシコ国境に壁建設」「移民制限」など次々と打ち出される排外主義の政策は、社会的不満のはけ口を用意し、99%の民衆を分断支配するものだ。必然的に社会的不平等を生みだす新自由主義政策は「人権擁護」という最重要の規範を公然と踏みにじるほど暴力的なのである。

安倍打倒で世界と連帯

 米国内だけでなく世界中に広がった「女性の行進」。主催者は「これで終わりではない。家族、友人、地域がともに歴史を作ろう」と新たなキャンペーンを呼び掛けている。「最初の100日間で10の行動」キャンペーンだ。10日間で1つの行動を。まず自分にとって大事な課題について上院議員に手紙を書こうと呼びかけている。

 日本では「企業が一番活動しやすい国づくり」を宣言する安倍政権が、トランプと同じように人権侵害を平然と行い、排外主義を煽り戦争国家へと暴走している。戦争と新自由主義政策に反対する全世界の人びとと連帯し、安倍打倒の闘いでこのキャンペーンに合流しよう。







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