2017年02月24日 1466号

【入国禁止の米大統領令 人権否定容認した安倍 テロを口実に「99%」の分断図る】

 友好関係を最大限に演じて見せた日米首脳会談(現地2月10日)。記者会見で米メディアの最初の質問は日米関係ではなく、憲法違反が問われる大統領令だった。

 イスラム圏7か国からの入国一時禁止を命じた大統領令を執行停止されたトランプ米大統領は、新たな大統領令などの追加措置をとる考えを明らかにした。テロ対策を口実に分断支配を強める日米両首脳。安倍は「内政問題でノーコメント」と応じ、トランプは「われわれは相性がいいんだ」とにやけて見せた。

全世界から相次ぐ批判

 「外国テロリストの入国からの米国の保護」と題された大統領令は、シリア難民の受け入れは国益に合致すると判断できるまで無期限、他国の難民は120日間受け入れ停止。テロが懸念される国を指定し、90日間入国禁止、その間に入国手続きの厳格化をめざすとする。指定国名はシリア、イラク以外明記されていないが、イラン、リビア、ソマリア、スーダン、イエメンの計7か国と報道されている。

 選挙中「イスラム教徒の入国禁止」を放言していたトランプ。明らかにイスラム教徒=テロとの構図を意図的につくりだすものだ。

 差別を煽る大統領令に対し、ワシントン州の司法長官が1月30日、連邦地裁に大統領令の執行停止と憲法違反を提訴。カリフォルニアやバージニア、ミシガン、ニューヨーク、マサチューセッツ、ミネソタ、ハワイなどの各州が続いた。日本でいえば、自治体が政府を憲法違反で訴える事態だ。人権団体なども提訴した。

 全米、全世界に広がる入国禁止令ノーの声を背景に、連邦地裁は2月3日、執行停止を決定。控訴裁(サンフランシスコ)も9日、その維持を決定したため、大統領令は無効となっている。トランプは最高裁で仮処分取り消しを争う姿勢だが、大統領令の憲法違反を問う裁判はこれからだ。

排外主義は戦争への道

 イスラム圏諸国の中で、なぜ7か国を対象としたのか。

 大統領令第1項目的では、「約3千人の米国人を殺害した19人の外国人のビザ審査」を問題にし、9・11事件を入国禁止の正当化に使っている。では米政府が9・11テロ犯出身国とするサウジアラビアを除いたのはなぜか。イスラム圏であるトルコやエジプト、アラブ首長国連邦を除いたのはなぜか。これらの国には、トランプ所有ビルなどがあり、指定すれば自らのビジネスの支障になるためだ。

 一方、対象国のシリアやイラク、リビアは米軍が侵略、破壊した国家だ。「対テロ戦争」を掲げ軍事介入しているイエメンでは民間人を殺害し、イエメン政府が米軍による地上作戦の許可を取り消す事態となっている。イランには「世界で唯一最大のテロ支援国家」と挑発を重ねた。ソマリア、スーダンはアフリカ利権をめぐる軍事介入の地である。「米国の安全のため」と称して、戦争の火種を消さないように排外主義を煽るのは、軍産複合体が主導する歴代米政権と変わりない。

 大統領令の賛否を問う世論調査では、発令前の賛成57%反対33%(調査会社ラスムセン)が、地裁判決のあった2月初旬には、賛成47%、反対53%(CNN)と逆転したもののトランプ支持者は根強くいる。トランプの役割は、グローバル資本主義の犠牲者である99%の人びとが共通の敵に立ち向かうのを妨げることにある。一定の効果をあげているこの憎悪扇動を封じ込めなければならない。

パートナー安倍

 安倍は大統領令について「難民、移民政策は内政問題で、コメントは差し控える」と容認姿勢を世界に示した。主要国首脳が「難民を支援する国際法や国際協力に反する」(メルケル独首相)と非難したのとは対照的だ。

 「難民の地位に関する条約」(1951年)は「人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の一員であることや政治的意見のために生命や自由が脅かされる恐れのある領域の国境へ追放、送還してはならない」とする。日本も86年に承認・発効した。だが日本の難民政策は、トランプ以上に閉鎖的排外主義的であり、人権侵害・ヘイト肯定に徹している。

 ウソとごまかし、テロ対策を口実に強権支配を狙う安倍は、トランプの良きパートナー≠セ。憲法違反もどこ吹く風、司法をも番犬とする支配はトランプの先を行く。日米の排外主義者による分断支配を許すわけにはいかない。

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