2017年03月17日 1469号

【インドに原発を売るな 山場を迎えた日印原子力協定 国会承認阻止へ全力を】

 インドへの原発輸出に道を開く日印原子力協定を阻止する闘いは、いよいよ山場を迎えた。日印両政府による署名(昨年11月11日)に続き、日本政府は2月24日、日印原子力協定の承認案を国会に提出した。協定締結阻止に向け全力を挙げる時だ。

原発建設と核軍拡を後押し

 インドは核不拡散条約(NPT)を未締約であり、過去2度にわたって核実験を強行した核武装国である。日印原子力協定は、インドを6番目の「核保有国」として認め、国際的な核不拡散体制の形骸化に拍車をかけるものだ。

 日印原子力協定では、インドによる使用済み核燃料の再処理とウラン濃縮を認める一方、「査察」については国際原子力機関(IAEA)任せで、しかもインドが「民生用」と宣言した施設に限定される。日本の協力で建設した原発から生み出された核物質が軍事転用される最悪の事態も含め、インドの核兵器増産につながる危険性が高い。

 さらに、インドが再び核実験を強行した場合の「協力停止」については、協定本文に条項が盛り込まれず、位置付け不明の別文書にとどまった。しかも、この文書にすら「核実験」の文字はなく、まったく「歯止め」にならないというお粗末さである。

 このような協定を締結すれば、「核開発は権利」と主張するインドの核軍拡に手を貸す結果となるのは明白である。それはまた、同じく核武装国である隣国・パキスタンとの軍事的緊張を高めずにはおかない。

原子力産業の延命ねらう

 なりふり構わず協定締結を目指す目的は、何よりもインドへの原発輸出に道を開くことだ。福島原発事故後、国内で原発の新増設と再稼働への反対運動が高まる中、経営悪化の危機に直面した原子力産業は海外に活路を求め、原発輸出による延命・立て直しに躍起となっているのである。

 3・11後の世界的な原子力事業の落ち込みが日系原発メーカーに与えた打撃は大きい。東芝は米国子会社・ウエスチングハウス(WH)に関わる7千億円もの巨額損失のため、債務超過・解体の危機に瀕しており、すでに海外の原発工事からの撤退を表明。英国とインドにおける原発事業について「関与縮小」を検討するまでに追い詰められている。日立も米原子力事業の不振により700億円もの損失を計上した。三菱重工もまた、米国の原発事業に絡み現地の電力会社から7千億円超の損害賠償を請求されるなど、財務悪化への懸念が広がっている。

 福島原発事故から6年、原子力損害賠償法によって不当に「免責」されてきた原発メーカーにも、ついに巨額損失という形で危機が表面化したのである。「原発は成り立たない」という事実を、もはや誰も覆い隠すことはできない。

 折しも国連では「核兵器禁止条約」の交渉が始まるなど、世界的に「核兵器なき世界」への気運が高まっている。原発メーカーが業績不振に見舞われ、東芝/WHが解体的再編を迫られている今、対インド原発輸出の出鼻をくじく好機である。

内外の力合わせ阻止へ

 今年1月、一昨年来の運動を継承・発展させ、従来の反原発運動の枠組みを超えた国内21団体・個人による「日印原子力協定国会承認反対キャンペーン」が立ち上がった。「戦略ODAと原発輸出に反対する市民アクション」(コアネット)もその一翼を担い、国会内外で反対世論の結集に全力を挙げている。この3月には、超党派「原発ゼロの会」をはじめ衆参両院の心ある国会議員とも連携しつつ、日印原子力協定の重大な問題点を広く明らかにし、与党と補完勢力による承認案採決を阻止するための行動を集中的に実施する。3月20日「さようなら原発全国集会」に続き、3月27日には「全交中央行動」の一環として対政府交渉と院内集会を開催する。並行して、国会承認・批准反対の国際署名を展開しつつある。

 インド現地では、モディ政権による厳しい弾圧にもかかわらず、3・11を中心にコバーダ、ゴーラクプル、ジャイタプールの原発建設予定地など各地でさまざまな反対行動が準備されている。インドの運動と固く連帯し、国内諸団体・議員と手を携え、日印原子力協定とインドへの原発輸出を阻止するために闘い抜く決意である。

(戦略ODAと原発輸出に反対する市民アクション<コアネット>事務局次長 村地秀行)

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