2017年03月17日 1469号

【「月桃の花」歌舞団/『ガマ人間あらわる』鶴見公演を終えて】

 「月頭の花」歌舞団は2月26日、横浜・鶴見区でミュージカル『ガマ人間あらわる』を上演した。関東圏での公演は8か月ぶり。当日の鑑賞者は1回目が70人、2回目が43人で、1回目はほぼ満席だった。歌舞団の2人から報告が寄せられた。

「私の命は私のもの」伝わった

 共謀罪や憲法改悪がねらわれている情勢の中で、「命」をテーマにしたミュージカルを一人でも多くの人に見てほしいという思いで1日2回公演を行いました。

 沖縄出身の方が多い鶴見なので、沖縄の人とつながって広げることをめざしました。鶴見駅前でエイサーを踊って宣伝していると、「うちなーんちゅの血が騒ぐ」と飛び入りでエイサーに加わる沖縄出身の若者や、指笛を吹いてくれる方も。鶴見沖縄県人会の新年会やもちつき大会にも参加し、ZENKOかながわ制作のヤンバルクイナ帽子をプレゼントしたら、大好評でした。当日も6人以上来てくださり、県人会の仲宗根保さんは「涙がとまらなかった」とおっしゃっていました。

 もう一つめざしたのは、若い人にぜひ見てほしいということです。

 25歳以下の料金を1000円に割引。歌舞団の若手団員がまず友人を誘うこと、招待でもいいので若者に来てもらうことにしました。

 その結果、公演後行った2回の若者交流会にのべ20人以上が集まり、活発な討議ができました。

 福島からの避難者ともつながることができました。南相馬から避難してきた山田俊子さんは、公演前のあいさつで「3月で避難者の住宅補償が打ち切られる。途方に暮れている避難者も多い」と訴えておられました。

 アンケートでは「沖縄、原発、雇用の問題、そして命というテーマを悪の根源のガマ人間と絡ませながら重層的に展開していて素晴らしい構成でした」「沖縄のこと、原発のこと、働き方のこと、いろいろ考えました。もっと若い人たちに見てほしい」「最後の『ダイレクト』の歌がよかった」といった感想をいただきました。

 若者交流会で「下に民衆、上にガマ人間。登場人物のやりあいでも、2人の問題がちょっと引いて、距離をおいてみるともう1つのファクターがある。今まで持てなかった視点を教えてくれる」「福島、沖縄、労働。他人事でなく自分たちの根底にあるんだなと思った」などの意見が出たことも、うれしかったです。

 「多くの問題を詰め込みすぎ」という感想に表れているような演出や演技の問題もまだまだありますが、グローバル資本が支配する社会の構造を知り、考えるきっかけにはなったと思います。「私の命は私のものだ。私が決める」というメッセージを伝えることができました。

 もっと多くの若者に見てほしい。実際に来場してくれた若者は、団員の友人だったり知り合いだったりしたので、若者団員を増やすことが若者の鑑賞者を増やす大きな力になることが改めてわかりました。さらに、SNSを使って宣伝したり若者向けのチラシを作ったりしながら、若者たちに、全国に『ガマ人間』を広げていきたいです。

       (神子幸恵)


沖縄戦被害者の心 表現できた

 公演の翌日は介護の仕事だった。朝から全身筋肉痛で腰も痛む。しゃがむのもひと苦労だ。それでも前日の鶴見公演は楽しかった。

 今回の役は、沖縄戦で心を閉ざす住民、手りゅう弾を住民に配る役場の課長だ。

 昨年の8月、福島プレ公演が初舞台。役者になって半年だ。今までは、台詞を覚えることで精いっぱい。今回は、表現を意識した。住民はガマの中に避難している。ガマをイメージしても、台詞にある暗くて冷たいところしかイメージできなかった。

 『ガマ』という本を沖縄の書店で買って勉強するところから始めた。何度も本を閉じたくなった。ガマごとに延々と悲劇が述べられていて、正直つらかった。壕の外から米軍に「出て来い」と何度も言われても、じっと耐えて死を選んでしまう。もし私がその立場にいたら、と思うと、言葉も出ない程恐ろしい。

 本番では、監督の原さんから指摘されたこと、『ガマ』の描写を意識した。ドーン、ドーン。空から海から米軍が撃ってくる。生きる希望をなくした住民はガマの中ですわっている。国に見捨てられ、米軍の捕虜になることもできず、死あるのみと意識して演じた。手りゅう弾の場面では、稽古で原さんに渡し方を何度も注意された。無理やり上から押し付けられ、早く配り終えて自らも死にたい。一方、住民に手りゅう弾を突き付ける罪悪感もある。本番では複雑な思いを表現できたと思う。

 当日、就活で知り合った友人が来てくれた。一年以上ぶりの再会だ。「大切なのは個人。社会人になって、ニュースは知っていても考える余裕がなかった。次回も観たい」と言っていた。

 本公演をもって、就活のため、活動を休止する。今までで最高のステージになったと思う。悔いはない。

       (竹内雄紀)

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