2017年03月17日 1469号

【未来への責任(220)排外主義止める植民地歴史博物館】

 3月4日、韓国の民族問題研究所から「植民地歴史博物館」建設用地(ビル)が決まったとの連絡が入った。場所は、ソウル市龍山(ヨンサン)区。近くに白凡金九(ペクポムキムグ)紀念館や抗日運動家の墓地が置かれた孝昌(ヒョチャン)公園があるとのこと。ソウル駅から遠くなく交通も便利。用地選定は難航していたが、結果的には良い場所を確保することができた。安堵した。

 この「植民地歴史博物館」は、日本の朝鮮植民地支配や戦後補償運動などに関わる資料等を集め、展示・教育を行うとともに、研究、国際交流にもとりくむ。このような活動を通じて、人権の確立と東アジアの平和実現を目指す。この博物館建設は植民地主義清算を進める上で大きな意義を持つと思われる。

 今、日韓間では日本軍「慰安婦」問題が“再燃”している。日本政府は、釜山(プサン)の日本領事館前に「平和の少女像」が建てられたことを「約束違反」と非難し、大使・領事を一時帰国させる等の措置をとった。「10億円は払った」、今度は韓国側が「誠意を見せろ」、これが日本政府の立場だ。そして大方の日本人もこの安倍政権の対応を「承認」している。それでよいのか、と思う。日本軍「慰安婦」問題は、「軍の関与のもとに多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題」であった。それ故、安倍首相は「内閣総理大臣として心からおわびと反省の気持ちを表明」した。それが10億円でチャラになるのか。二度とこのような人道に対する罪、人権侵害を繰り返さぬために実行すべきことはないのか。記録の保存・展示、教育等はどうするのか。

 同じことは強制連行・強制労働についても言える。「明治日本の産業革命遺産(23施設)」のユネスコ世界遺産登録に際して、日本政府は「いくつかの施設において、1940年代に、自分の意思に反して送致され、過酷な条件下で働くことを強制された(forced to work)多くの朝鮮人等が存在したこと」を認めた。そして、「犠牲者を記憶にとどめるために適切な措置を説明に盛り込む」と約束した。しかし、登録後は一転して、「forced to work」は「『強制労働』を意味するものでない」(岸田外相)「徴用令による徴用は強制労働禁止条約に違反するものではなかった」(菅官房長官)などと言い出した。全くの二枚舌である。しかし、メディアからそれに対する批判はほとんど聞こえて来ない。

 ドイツでは、「ホロコースト記念碑」、「虐殺されたシンティ・ロマの記念碑」、同性愛者・精神障がい者の記念碑が建てられ、ナチの犯罪を記憶するための措置が講じられている。それが排外主義の台頭を辛うじて食いとめている。そう思う。

 この「植民地歴史博物館」建設を何としても日韓市民の連帯で成功させたい。それがレイシズム、排外主義を止める力になると信じる。

(強制連行・企業責任追及裁判全国ネットワーク事務局長 矢野秀喜)

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