2017年03月24日 1470号

【南スーダン自衛隊派兵終結を決定/安倍の派兵拡大路線は破綻/5月でなく今すぐ撤退を】

 3月10日、安倍政権はNSC(国家安全保障会議)を開き、南スーダンPKO(国連平和維持活動)への自衛隊施設部隊派兵終結を決定した。現在展開している第11次部隊の3月末までの派兵期限を2か月間延長し5月に撤退する。

 南スーダン派兵撤退で、カンボジアPKO以来続いた実戦部隊のPKO派兵はいったん途絶える。それは「地球儀俯瞰(ふかん)外交・積極的平和主義」を看板に、グローバル資本が求める海外派兵の常態化から改憲を狙う安倍政権の終わりの始まりとなる。

現実離れの記者会見

 安倍首相は記者会見で撤退の理由を「南スーダンの国創りが新たな段階を迎える中、自衛隊が担当しているジュバにおける施設整備は一定の区切りをつけた」とした。

 これは全く事実に反する。

 2011年に独立した南スーダンは13年12月、軍が大統領派と副大統領派に分かれて内戦に突入した。石油利権をめぐって始まった争いは形だけの停戦合意を経て、大統領派のディンカ人対副大統領派のヌエル人という民族対立にまで拡大。虐殺・暴行・略奪・レイプが頻発し、ジェノサイドの様相さえ見せる。

 直近では16年7月、戦車・迫撃砲・戦闘ヘリまで投入した大規模な戦闘が首都ジュバ内外で展開された。国内外の難民は340万人に上り、当初は国づくりが目的であったUNMISS(国連南スーダン共和国派遣団)の任務は文民保護に替わり、国連施設は難民キャンプ化した。PKO要員からも死者が出る内戦激化に、UNMISSは、大統領派・副大統領派を問わず難民・国連施設への攻撃には武力行使もいとわない。

 事態の悪化に国連安全保障理事会は2月10日、声明を発した。市民の殺害、民族間の暴力、性暴力、家屋破壊、財産略奪に「深刻な懸念」を表明。とりわけ市民への攻撃は「戦争犯罪の可能性がある」と警告し「最も強い言葉で非難する」とした。

 こうした大混乱、内戦状態が「国創りの新たな局面を迎えた」と言えるわけがない。

どこが「一区切り」か

 また、政府は自衛隊派兵の「成果」として担当地域・首都ジュバで「道路補修210q、用地造成50万u」をあげる。だが、補修といっても土盛りして重機でならしただけ。50万uといっても707m四方にすぎない。

 派兵部隊の公式任務は「国づくりのためのインフラ整備」だが、内戦の渦中では自衛隊は宿営地にこもる日々が続いた。その挙句、5年間毎年200億円ともいわれる経費=税金を使い、のべ4千人近い人員を投入した結果がこれだ。インフラ整備でも「一定の区切りがついた」などといえる代物ではない。

殺し殺される前に撤退を

 では、なぜ今撤退表明か。

 現在の派兵部隊には、戦争法による「駆けつけ警護」「宿営地防護」の任務が付与された。武力行使を禁じた憲法に明らかに反する。戦争法に反対してきた市民は、安倍による強行制定以降も、戦争法廃止を求めて行動を継続。南スーダンPKO撤退の運動を強めてきた。運動の力は、国会内でも戦闘状態では派遣できないとするPKO5原則違反を焦点化した。

 戦闘の頻発を報告した現地部隊の日報をめぐるデタラメは、メディアでも繰り返し報じられた。稲田防衛大臣が「事実行為としての殺傷行為はあったが、憲法9条上問題となる言葉は使うべきではないことから、武力衝突という言葉を使っている」という支離滅裂な答弁をせざるを得なくなった。憲法否定の姿勢は追いつめられているのだ。

 現地で活動するNGO職員は公聴会で「PKO5原則は崩れている」と断言する。自衛隊の新任務について「一発でも打てば日本への敵対感情を生むだけだ」と批判し、「憲法9条を持つ国として周辺国とともに武力では解決しない≠ニ紛争当事者を説得すべき」と日本政府の役割を説いた。

 南スーダンPKOが違憲・違法であることがあらわとなり、いくらうそを並べ立てても安倍が派兵を正当化できなくなった末の撤退表明だ。

 安倍政権は、PKO派兵部隊に新任務を与え、攻撃兵器の装備を強化し、武力行使の実績を作ることで戦争法の実体化を狙った。そのもくろみは運動の力の前に破綻した。

 だが、南スーダン国内の急激な対立の拡大は予断を許さない。2か月の任務延長は、自衛隊が銃弾を発射し、殺し殺される危険性を残すものだ。派兵延長を許さず直ちに撤退させなければならない。

 
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