2017年03月24日 1470号

【福島原発2号機 線量210シーベルト これでは廃炉もできない】

 1月から2月にかけて、東京電力は、遠隔カメラやロボットによる福島第1原発2号機格納容器内部の調査結果を相次いで発表した。燃料デブリが圧力容器から格納容器内に落下している事実も公表された。驚くべきは格納容器内部の放射線量だ。東電が公表した210シーベルト(4分間の積算線量)とはどんな数値なのか。

広島原爆2発分

 原発推進側であるICRP(国際放射線防護委員会)の資料でも、全身被曝の場合、500_シーベルト(0・5シーベルト)でリンパ球の減少が起こり、1シーベルトでは嘔吐。3〜4シーベルトを浴びると半数が死亡、7シーベルトでは全員が死亡するとしている。実際、茨城県東海村のJCO東海事業所で起きた臨界事故(1999年)では、中性子線を中心に8シーベルトの被曝をした作業員が死亡している。今回の数値は全員が死亡する水準の30倍に当たる。

 米国のオークリッジ国立研究所は1966年、広島に投下された原子爆弾の爆心地における線量を約103シーベルトと推定している。今回公表された数値は、広島原爆2発分に当たる凄まじい放射線量だ。これでは作業員が近づくこともできない。

溶け落ちた燃料

 今回、調査用ロボットは圧力容器の真下にあるプラットホーム(作業用の足場)に近づく途中で故障。調査続行が不可能になった。それでも一連の調査で明らかになったことがある。

 溶け落ちた燃料の一部は損傷した圧力容器の底を突き抜けプラットホーム上に落下。グレーチング(側溝にあるような金属製の蓋)も燃料の高温で溶け一部で変形、一部が崩落している。溶けた核燃料とみられる黒い堆積物がびっしりとこびりついている様子も確認された。

 210シーベルトの放射線量が確認された場所は、圧力容器の真下ではなく、そこに至る途中にあった。ロボットの投入口となった場所で30シーベルトの線量が測定される一方、圧力容器に近づくにつれて、線量は20シーベルトに下がったこともわかった。圧力容器の中に核燃料が多く残っているなら、圧力容器に近い場所ほど高線量になるはずである。そうなっていないのは、圧力容器の中にあった核燃料の多くが飛び散ったことを意味している。

 東京大の阿部弘亨(ひろあき)教授(原子力材料学)も「溶けた核燃料が格納容器の底で水分の多いコンクリートと激しく反応し、溶岩が海に流れ込んだ時のように遠くまで飛び散った可能性がある」と推測する。

今後はどうなる

 東電と国は、2018年度までに燃料の取り出し方法を決め、1〜3号機のいずれかで2021年までに燃料取り出しを始めるという非現実的な廃炉計画を立てている。

 広島原爆2発分もの高線量である2号機の燃料取り出しについて、東電は、圧力容器を水で満たし遮蔽してから行う方法が有力だと説明する。しかし、今回の調査でわかったのは圧力容器が損傷している事実だ。壊れた圧力容器をどうやって水で満たすのか。溶け落ち、飛び散った燃料からの強い放射線を遮蔽する方法もない。東電の計画は非現実的で実行は不可能だ。

 事故から30年が経ったチェルノブイリ原発でさえ、「象の足」と呼ばれる溶け落ちた燃料の塊に今なお誰も近づけず、燃料の取り出しの見通しは立たない。旧ソ連政府は、事故を起こしたチェルノブイリ4号機に大量のセメントを投下して石棺(コンクリートの塊)で覆う措置を採ったが、その石棺も強い放射線量を受け続けた結果老朽化し、取り替え工事が進行中だ。新しい石棺は100年間耐えられる設計とされる。ソ連解体でチェルノブイリ原発を引き継いだウクライナ政府が、100年後も廃炉作業が続くとの見通しであることを意味する。

チェルノブイリ以上に困難

 チェルノブイリ原発で石棺化が可能だったのは、原子炉も燃料もすべて吹き飛んだからである。原子炉も燃料も中途半端に残っている福島では、残った燃料の温度が上昇、再爆発の危険もあり、石棺化も難しいとされる。小出裕章・元京都大学原子炉実験所助教は「今生きている日本人で廃炉作業の完了を見届けられる人はいない」という。福島第1原発の廃炉は、チェルノブイリ以上に困難な道となるのは確実だ。

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