2017年06月02日 1479号

【共謀罪はブラック法案/自公維新が共謀 一部修正で強行採決/理由も内容もでたらめ法案を隠蔽】

 提案理由も法案の目的・内容もでたらめな共謀罪法案。一部修正したからと、日本維新の会が賛成に回った。衆院法務委で強行採決、本会議でも強行された。政府は「野党も賛成、強行採決ではない」といつもの逃げ口上を繰り返す。維新の会は共謀罪に限らず、森友問題、改憲論議など自民党の補完勢力として、悪辣な役割を果たしている。

修正はより悪質に

 「足を引っ張ることが目的の質疑は、これ以上は必要ない」と日本維新の会が採決を促す発言をした直後、自民党議員が採決動議、公明党議員が付帯決議を読み上げ、「採決」。5月19日の衆院法務委員会、委員長の声も聞きとれない中で、強行採決を行った。審議を重ねるたびに明らかになってくる共謀罪の危険性を覆い隠す悪質な行為だ。

 日本維新の会が賛成する「大義名分」は「捜査・取り調べの適正性を確保すること」が修正明記されたことだと言う。自公維新の3党で合意した内容は、(1)本則に「取り調べを含む捜査について、適正確保のために十分配慮しなければならない」と追記し、(2)附則に「取り調べの可視化(録音・録画)とGPS(全地球測位システム)捜査の制度化の検討」を加え、(3)同趣旨の付帯決議を行う、だ。

 市民監視を狙う共謀罪法案に、「捜査の適正化」をうたっても何の歯止めにもならない。法の存在自体が萎縮効果を発揮し、市民監視を合法化するからだ。まして修正追加された「取り調べの可視化」で、「捜査の適正化」が確保されることはない。

 可視化は、裁判員裁判事件と検察独自捜査事件に導入を義務付けた刑事訴訟法の改悪(2016年)時に、捜査当局による悪用が指摘されている。任意の事情聴取で自白を強要し、それに合わせた「自白ビデオ」がつくられる。「自首」による減刑・免罪と合わせ、事件のデッチ上げを隠蔽(ぺい)する道具になる。

 GPS捜査は、今年3月最高裁が「令状なしの実施は違法」との判断を示した。これを受け維新は「捜査機関に最低限の武器を与えることが必要」と修正理由を説明している。これまで警察が秘密で行っていたGPS捜査や違法監視を堂々と認めようということだ。

 監視合法化の共謀罪法案をさらに危険なものに補強した今回の修正。「わが党の思いはほぼ受け入れられた」と満足げに語る日本維新の会に「3党は足並みをそろえて法案を通そうという強い意志を示した」と自民党は応じた。3党は共謀し、役割分担をきめ審議封じ込めの「犯罪」(強行採決)を実行したのである。

提案理由でたらめ

 そもそも、共謀罪法案の提案理由が全くでたらめであることを厳しく問わねばならない。なぜ共謀罪法が必要なのか。法案の提案理由には、「国際組織犯罪防止(TOC)条約」の締結に伴い必要とあり、安倍首相は、テロ対策強化、東京五輪・パラリンピック開催に不可欠と言ってきた。

 だが、TOC条約はテロ対策条約ではないこと、条約は2003年に国会承認済みであり通告するだけで加盟国となれることは、本紙も指摘してきた。条約加盟のための「立法ガイドライン」を作成した国際刑法学者のニコス・パッサス教授も報道ステーション(5/16放送)のインタビューで明確に応えている。

 パッサス教授は「条約はテロ対策ではない」と明言。テロ対策用の条約は別にある。日本は、国連の主要なテロ対策条約13本を批准し、法整備も完了している。パッサス教授は「どの国の政府も、国際条約を口実にして国内で優先したい犯罪対策を実現させることができる。(国内法の整備は)法の支配にのっとり公正でなくてはいけない。日本国民の意向を反映させるべきだ」と指摘した。

 テロ対策ではない条約への加盟を口実に「テロ等準備罪」と名づけて共謀罪導入を強行するなどもってのほかだと、忠告しているのである。

 提案理由がでたらめの上に、金田法相のでたらめ答弁が繰り返されている。

迷走する法相答弁

 5月8日の衆院予算員会で、一般人が刑事告発(刑事訴訟法第239条)された場合「捜査の対象となるか」と聞かれた法相は「告発された場合でも、嫌疑がなければ捜査の対象にはならない」と答弁した。だが法令に従えば、告発事件は「特にすみやかに捜査を行うように努める」(国家公安委員会規則、犯罪捜査規範第67条)ことになっている。告発者の虚偽・誇張がないかを含め、嫌疑の有無を明らかにするためだ。

 金田法相答弁は、既存の法令と矛盾し意味不明となっても、意に介さない。何を聞かれても「一般人は嫌疑がなければ対象とはならない」と共謀罪の危険性をごまかすための答弁書を読み上げる。維新は「足引っ張りの質問だ」と質問者を非難するが、法相に答弁させたくないのが本音だ。

 迷走答弁が示すのは、共謀罪法は成立させてはならないブラック政権によるブラック法案であることだ。

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