2017年06月02日 1479号

【イラクと日本/モスル無差別爆撃 膨大な犠牲者は市民/デモ制限許さぬ闘い広がる】

「解放」の陰で

 5月16日、イラク軍報道官は、モスルのIS(「イスラム国」)との戦闘について「ごく短い期間のうちに、モスル西側の解放を宣言する」と発表した。しかし、一方で米軍が主導する「有志連合」とイラク軍の無差別爆撃によって、膨大な市民の犠牲者が出ている。ISに対する戦闘の名で米国とその同盟国の戦闘機は4月だけでもイラクとシリアに計2237発の爆弾とミサイルを発射。1280人〜1744人にのぼる市民が殺された。うち旧モスル市と西モスルの市内と周辺だけで784人〜1074人が死亡。シリア中北部のタクバ周辺でも多くの市民の犠牲者が出ている。

 米国防省は、2014年11月米軍空爆開始以降の市民の犠牲者を325人と発表している。大うそだ。実際は2万5千人から最大19万人にのぼると推計される。

 トランプ政権・米軍はイラク国内にすでに5800人の兵員を配置し、複数の軍事基地を使用している。仮にISを一掃しても石油利権確保のためにイラクに長期駐留するつもりなのだ。

立ち上がる市民

 イラクの市民、労働者は、ISのテロにも、市民を無差別攻撃する米軍にも、汚職だらけのアバディ政権にも反対し、平和と人権を守る闘いを進めている。

 モスルから脱出した数十万人に及ぶ国内難民に、イラク政府はまともな支援をしない。これに対し、バグダッドや北部クルド地方のスレイマニヤ、フセイン独裁政権以来の亡命者が多いロンドンなど国内外で市民がモスルの難民への支援運動を展開している。

 さらに、アバディ政権の進める緊縮政策と人権抑圧に反撃の声を上げている。

 5月8日、中部の都市クートで、多数の清掃労働者が賃金遅配と1か月30万ディナール(約2万5千円)から15万ディナールへの大幅賃下げに反対して抗議デモを展開した。

 アバディ政権は現在、生活破壊に怒る市民の闘いを弾圧するために表現の権利とデモの自由を制限する法案を制定しようとしている。デモの届け出を5日前にしなければならず、デモ行進の時間も制限される。違反者には3か月の投獄か300万ディナール(約25万円)の罰金が科されるという代物だ。反対運動が急速に展開し、国会審議をストップさせている。

 こうした情勢の下、イラク労働者共産党は2つの大きな取り組みを進めている。

 一つは、イスラム教の強制・支配が強まる大学の中で、それに反対して自由と権利を要求する学生の運動を広げることである。二つ目は、様々な都市で建築労働者、自治体労働者、石油労働者などの組織化を進めることである。賃金が4か月も6か月も支払われないという状況を変えていく。アバディ政権の緊縮政策に反対し、労働時間の短縮などの労働条件改善の闘いを展開する。

 2017ZENKOin東京にはイラクからイラク労働者共産党のサミール・アディルさんが参加する。トランプ・安倍とグローバル資本の戦争と人権破壊に反対する国際連帯の闘いを共に作り上げていこう。

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