2017年06月02日 1479号

【「自立支援」の名で保険サービスから排除 介護保険法改革許すな 尊厳ある暮らしを守る6・4つどいへ】

 5月17日、介護保険法改悪案が参院本会議で審議入りした。改悪案は、森友問題のドサクサにまぎれて衆院厚生労働委員会(4/12)で強行可決され4月18日衆院を通過したもの。2015年に1割から2割に引き上げたばかりの利用者負担割合を3割に引き上げ、負担増とサービス抑制を引き起こすことに強い批判がわき起こっている。同時にこの改悪案は、「地域包括ケアシステムの強化」「自立支援」の名で介護サービスを根本的に制約・削減し、保険あって介護なし℃ミ会保障解体を進めるものだ。「6・4介護のつどい」を準備する畑廣昭さんから、改悪案の問題点について寄稿してもらった。

 今回の改悪案による2018年介護保険改定で、一定の収入以上のサービス利用者に3割負担を導入することにとどまらず、介護保険の根源的目的をすり替え、介護にかかる費用を抑制しようとする狙いが見えてきた。

 3年前の改定で2割負担が導入され、その結果、該当する利用者は4割が利用を抑制したという調査結果が出ている。いったん3割負担が導入されれば次々と対象が拡大されていくことは明らかであり、該当する収入基準が下げられれば影響は甚大だ。

介護保険本来の目的を否定

 もう一つの狙い、目的のすり替えとは何か。

 「有する能力に応じた自立した日常生活を営めるようにする、そのために必要な援助、サポートを行う」という介護保険本来の目的(第1条)から、「自立=介護度の改善、介護状態からの卒業」に重点を置くというものである。それを促すために政府は「介護度が改善された市町村に交付金を支出する」と競争を煽るシステムを準備している。

 加齢に伴い体力、気力、知力が低下するのはごく当たり前のことだ。その時々の状態、能力に応じて介護従事者は必要な支援を行い、在宅生活を支えてきた。「自立、改善」といえば聞こえはいいが、そのことが自己目的化されるとどうなるか。自己責任が一層求められ、できなれば怠けているという烙印が押される危険性が高くなる。自立を求められ、無理をしてかえって悪化する悪循環が生まれる。

 さらに、市町村は求められる「介護度改善」を政府にアピールするために認定を厳しくするという手法をとることになる。例えば、要介護2の人について、状態は変わっていなくても要介護1または要支援という認定結果を出す可能性が高くなる。それは悲劇だ。これまで使っていたサービスが使えなくなり、むしろ重症化を招くことになる。

 介護1、2の生活援助の廃止、福祉用具の全額自己負担という当初の案は、全国からの反対の声で今回の改悪案からは見送られた。しかしこの考えは消えていない。政府は「介護2以下は介護保険のサービスから排除する」という方針を堅持しているからだ。

地域から声上げる

 尊厳ある暮らしを守ってきたのは介護労働者による人間的営みである。ひとり一人に寄り添い、その日の体調や気分を気遣い、一緒に家事や調理を行う、また頭や体を動かし、できることはやってもらう。そうした一つ一つの積み重ねが在宅生活を支えている。これこそが介護保険法の理念であり目的である。

 マスコミでは3割負担のことのみが取り上げられるが、水面下では介護保険法の目的をすり替える準備が進められている。介護2以下は保険サービスから排除するという荒っぽい手法はさすがに抵抗が強い。そこで「自立支援」という綺麗ごとをまとって介護サービスから排除するシステムをもくろんでいるのだ。

 介護保険財政そのものは制度導入以来16年間ずっと黒字が続いている。にもかかわらず安倍政権は社会保障削減ありきだ。「カネより命」「尊厳ある暮らし」を求める声を、運動を、地域から強め、全国に広げよう。

◆「もう黙ってられんで!尊厳ある暮らしを守る集い」
◇6月4日(日)13時30分〜
◇クレオ大阪東(JR京橋駅)

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