2017年06月16日 1481号

【未来への責任(226)大法院判決から5年】

 5月30日、韓国国会図書館内で太平洋戦争犠牲者補償推進協議会主催の「5・24大法院判決から5年〜もう待つことができない!日帝強制動員問題の総合的解決を模索する国際会議」が開催された。私も参加したが、文在寅(ムンジェイン)新政権に強制連行問題解決を求める本格的な取り組みだと思った。

 開会の挨拶は日韓議連の韓国側委員として長く携わってきた姜昌一(カンチャンイル)議員。「過去に公権力の犠牲になった人たちや植民地支配の犠牲になった人たちの話を数多く聞いてきた。新政権に国家政策としてこの問題を反映させなければならない。歴史を正すための政策案を近くまとめて提案していきたい」。過去清算を新政権の重要施策として実現させる決意が伝わってきた。

 被害者の高齢化が進んでいる。不二越に女子勤労挺身隊として強制連行された李福実(イボクシル)さんは「親に相談もせずに校長先生に言われるまま挺身隊に行くと言ってしまい、親からは止められたが、約束を破るのかと言われ仕方なく行った。待っていたのは勉強ではなく12時間交代の厳しい労働だけだった。今はもう、体中が病気だらけでまともに歩くこともできず体の中に恨(ハン)が積もった私たちを見て、死神でさえ怖くて連れて行こうとしない。日本政府の心のこもった謝罪と賠償が実現するまで待ってくれているのだと思う」。時にユーモアを交えながら幼い時に受けた厳しい体験を語った。

 釜石製鉄所に強制連行された李相周(イサンジュ)さんは、戸籍よりも実際は2年上の1923年生まれで今年93歳。2013年に韓国で新日鐵住金を訴えた7名の生存者原告の一人だ。元徴用工被害者は、女子勤労挺身隊被害者より少し上の世代に当たる人が多く、ほとんどが90歳を越える高齢の方である。2015年11月のソウル地裁勝利判決の時にもただ一人判決に立ち会うことのできた方である。「記者会見もした、勝利判決ももらったがなんにもならなかった」。新日鐵住金が判決を受け入れずに訴訟を引き延ばしたため解決できていない現状に悔しい思いを語った。

 民族問題研究所の任軒永(イムホニョン)所長は「過去清算問題について、被害者が亡くならないうちの解決を目指して取り組んできた。文政権で解決しなければ解決できない。日本との交渉で厳しい局面も出てくると思うが、本日のシンポジウムが歴史の転換点となることを願う」。シンポジウムの意義を実感した。

 張完翼(チャンワニク)弁護士からは、韓日請求権協定の限界を乗り越えるための「日帝強制動員被害者人権財団」の設立が提案された。被害者への賠償・支援金の支給、慰霊事業、史料館・博物館の建設、調査研究事業を行い、資金を拠出した日本企業には法律上の和解と同じ効果を認めることにより「法的安定性」も確保することで強制連行問題の全面的な解決を図ろうという提案だった。今の安倍政権が提案を受け入れる可能性は低いが、いよいよ日本に向け骰子(サイコロ)が投げられた。

(日本製鉄元徴用工裁判を支援する会 中田光信)

ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS