2017年09月29日 1495号

【働き方改革法案要綱を答申 過労死と労働者奴隷化を促進 これは働かせ方大改悪だ】

 9月15日、厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会は「働き方改革関連法案」要綱を「おおむね妥当」と答申。残業代ゼロ法案や裁量労働制拡大に反対する労働者代表意見は答申に付記されただけで、政府は答申をもとに8種類の労働法規改定を一括法案とする。過労死と労働者奴隷化を促進するこの働かせ方大改悪一括法案を絶対に許してはならない。

過労死も差別も合法に

 法案要綱には、労働基準法「改正」案として、(1)残業代ゼロ制度(高度プロフェッショナル制度)の創設(2)定額働かせ放題の裁量労働制の適用拡大(3)「過労死基準」の月100時間残業や年間実質960時間残業を容認する残業時間の上限規制が盛り込まれた。

 残業代を支払わずに働かせ放題を助長する過労死促進法≠ナある。

 さらに、労働者派遣法、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)に正社員と非正規労働者(パートと有期雇用、派遣)の「不合理な待遇の禁止条項」を設けた。しかし、法案には「同一労働同一賃金」という文言は見あたらない。非正規労働者を正社員と均等待遇にしなければならない条件は「非正規労働者の職務の内容や配置が、その職場の正社員と同様に変更されること」である。

 通常勤務地変更を伴う正社員と勤務地が特定される非正規労働者では同じ仕事をしても差別待遇が許される差別合法化法案≠ネのだ。

 要綱に突然盛り込まれたのが雇用対策法の一部「改正」である。「雇用対策法」を「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業政策の充実等に関する法律」に名称変更し、目的として「労働生産性の向上」を、国の施策として「多様な就業形態の普及」を初めて明記した。労働基準法が適用されず規制も権利も解体される労働契約自由社会=i「働き方の未来2035」厚労省)への具体化が着々と進められようとしている。

残業「規制」のまやかし

 連合は、(1)残業代ゼロ法案や(2)裁量労働制の拡大について、一時は条件付き合意の動きだったが、組織内外の批判の声が大きくなり、一応反対姿勢を取っている。しかし、(3)残業時間の上限規制についてはすでに合意している。法律家や一部メディアにも、(1)・(2)を残業ただ働き助長案、(3)を残業規制案とみなし、両案は相容れないとして一本化すべきではないという主張があるが、これは間違いだ。

 今回の残業時間の上限設定に、過労死の労災認定基準(おおむね月100時間、2〜6か月の月平均80時間の残業)を持ち出したことがそもそも誤りだ。

 この数字は、これだけの残業をしていたことが証明されれば、過労死が労災と認められやすいことを意味しているにすぎない。厚労省の労災補償データを見ると、近年の脳心臓疾患の労災認定(支給決定)件数の約半数は月100時間未満の残業で起きている(死亡事案では2015年度は57%、16年度は56%が100時間未満)。ストレスやパワハラなどの心理的負荷が大きな要因となる精神疾患の場合は、全体の3割強が月60時間未満の残業でも労災として認定されている。

 これまでは、たとえ月70時間の残業であっても、過労とストレスによる健康障害の事実が明らかであれば、労災として認定された。しかし法案が通れば、企業側は、残業は月100時間未満、月平均80時間以内であり、法定基準を守っていたと主張する。労災認定の壁が高くなり、労災として認定されたとしても、企業責任を問う損害賠償請求訴訟は極めて困難になる。労働基準法改定の3法案は、分ければいいというものではなく、3本の毒矢だ。全面的に反対しなければならない。

「世界一奴隷化」許すな

 安倍首相は日本を「世界で一番企業が活躍しやすい国」にすると繰り返す。グローバル資本の要求は、(1)より低賃金であること(2)死ぬまで働かせることが可能なこと(3)解雇が自由にできることだ。安倍の言葉を言い換えると世界で一番労働者が奴隷化した国≠ニなる。

 「労働憲法」といわれる労働基準法公布から今年で70年。公布の1年後に出版された『労働基準法解説』は「民主主義を支えるものは究極において国民一人一人の教養である。国民の大多数を占める労働者に余暇を保障し、必要な物質生活の基礎を保障することは、その教養を高めるための前提要件である。労働基準法は労働者に最低限度の文化生活を営むために必要な労働条件を保障することによってこうした要件を充たし、我が国における民主主義の根底を培(つちか)わんとするところにその政治的な制定理由を持つ」(労働省労働基準局課長・寺本廣作)とうたっていた。

 労働者の奴隷化を促進する「働き方改革一括法案」を葬り去ることは日本に民主主義を作り出す闘いだ。安倍政権を包囲し、労働法制大改悪を阻止しよう。

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