2017年10月13日 1497号

【MDS集会基調講演/小池新党は安倍と同根/改憲・戦争政策をとめる総選挙/改憲阻止勢力で3分の1超を】

 MDS(民主主義的社会主義運動)集会が9月30日、横浜と大阪で開催された。総選挙で改憲勢力を打倒しようと訴えた基調講演要旨を掲載する。(編集部の責任でまとめた)

なぜ今解散総選挙か

 安倍首相は9月28日衆議院を解散し、10月22日総選挙投開票となった。都議選の大敗で改憲戦略が狂った安倍の狙いは、朝鮮半島緊張激化と民進党の混乱に乗じて選挙で改憲体制を再構築し、来年の通常国会での憲法改正発議を可能とすることだ。そして森友、加計(かけ)疑惑を乗り切るための解散だ。

 朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)のミサイル発射、核実験とそれに対抗するとした米軍の軍事挑発による東アジアの緊張激化を、安倍は自らの支持率アップに利用している。首相側近は「弾道ミサイルが日本上空を飛べば支持率が5ポイント近く上がる。総理がトランプ大統領と電話会談すると1ポイント加算、これに核実験が重なるとプラス3ポイントのプレミアムが付く」(10/6週刊ポスト)と露骨に緊張激化を歓迎する。Jアラート(全国瞬時警報システム)は内閣支持率アップのために使われた。市民の命を守るのなら、米軍、自衛隊基地、原発周辺での市民避難対策を立てるべきだが、それはしない。市民、子どもにJアラートで恐怖感を植え付け、自衛隊への支持、安倍政権への支持を強めようとしているのだ。

 野党第1党の民進党の混乱も安倍はチャンスと見た。安倍首相は消費税の使い道を、借金返済から少子高齢化対策に変更することについて選挙で信を問うと表明した。だが増税は2年先であり、しかも民進党も同様の主張をしている。とってつけたような表向きの理由ではなく、今がチャンスとみて解散したのだ。

9条改憲を阻む

 安倍は、9月25日の解散表明記者会見では改憲に触れず、会見後のNHK出演で改憲を明確に語った。安倍は「北朝鮮がこういう状況のなかにあって、最前線で頑張っている自衛隊のみなさんがいる。選挙公約の書き方は自民党の中で議論していくが、基本的には、自衛隊の存在を明記することに向けて議論が進んでいく」(9/27しんぶん赤旗)と改憲を選挙公約とすることを明言した。

 安倍は「小池さんも維新も憲法改正には前向きなんだろうと思う。改憲について前向きな党自体は増えていくのかもしれない」(9/26読売)と、自公が議席を減らしても、「維新」(日本維新の会)、小池新党「希望」(希望の党)を合わせた改憲勢力で3分の2以上の議席を確保できると考えている。消費税の使い道が争点ではない。改憲、戦争への道を行くのか、9条擁護、平和、民主主義の道を行くのかが争点なのだ。

 安倍が利用した朝鮮半島危機は、武力ではなく交渉による解決しかないことを選挙過程で市民に訴え納得を得なければならない。

 米朝日首脳の危険な言動は武力をもてあそび、戦争を引き起こしかねない。トランプの発言を支持し、「圧力だ」という安倍も同罪だ。しかし、多くの国は交渉による解決を望んでいる(資料1)。


(資料1)朝鮮問題をめぐる各国首脳の発言

◆トランプ米大統領「米国と同盟国を守らなければならない時、北朝鮮を完全に破壊するほかない」(9/19国連総会)

◆金正恩(キムジョンウン)国防委員長「史上最強の超強硬対応措置を断行することについて慎重に考慮する」

◆安倍首相「必要なのは対話ではない。圧力だ」(9/20国連総会)

 *    *    *    *    *

◆ドイツ・メルケル首相「ドイツ政府はどのような武力解決も全く不適切だと判断するし、外交努力と(国連安保理決議の)制裁実現が正しい答えだ」。

◆フランス・マクロン大統領「軍事的解決を選択すれば、多くの犠牲者を生むことになる。私は多国間による交渉を通じて、平和を構築できると信じている」「売り言葉に買い言葉で圧力を増すのではなく、緊張を緩め、人びとを守らねばならない」

◆韓国・文在寅(ムンジェイン)大統領「平和的な方法で解決する」「北の崩壊を望まず、吸収統一も追及しない」

◆中国・王毅外相「交渉こそが唯一の解決策であり、当事者は互いの懸念事項に取り組むことで歩み寄るべきだ」

◆ロシア・ラブロフ外相「すべての当事国の対話を基礎に、朝鮮半島の核問題に取り組む政治、外交での方策以外に別の道はない」(9/23朝日、しんぶん赤旗他)


 明らかに日米は世界の多くの国と異なり軍事挑発路線を選んでいるのだ。この背景には米産軍複合体、また日本の軍需資本の利益がある。

 米上院は2018年度(17年10月―18年9月)軍事予算総額7000億ドル(約77兆円)を可決した。政府案を600億ドルも上回った。トランプ政権成立後軍需資本の株価は大幅に上昇している(表1)。トランプ政権を支える軍産複合体、金融資本が朝鮮危機による軍事力増強の受益者なのだ。



 安倍内閣も同様だ。朝鮮危機を口実に軍事費の2018年度概算要求は過去最大の5兆2551億円となった。防衛省が主に要求した項目は、米軍需産業の利益であると同時に日本の軍需産業の利益でもある(表2)。


対話・交渉で平和条約締結

 さらにこれまで日本が持つことができないとされてきた攻撃用兵器、核兵器を正当化しようとする動きが出てきた。

 小野寺五典防衛相は「相手に攻撃して(ミサイルを)撃たせないようにする当たり前の能力を持ってない国は、世界の中で恐らく(日本以外に)ない」(9/6しんぶん赤旗)と先制攻撃用兵器を持つことを主張した。維新の足立康史衆院議員も「仮に北朝鮮の核を排除できない場合は、日本も核オプションを持つべきだ」(9/16東京新聞)と非核三原則(核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず)を否定した。軍事関連企業幹部は1994年、熊谷弘官房長官(当時)に原子爆弾を「3か月で造れます」と答えている(9/17産経)。政府は核兵器保持を条件付きで「違憲ではない」としてきた。改憲勢力をのさばらせるならば、すぐにでも核兵器を持ちかねない。

 さらに自衛隊は米海軍イージス艦への洋上給油や米空軍との合同演習などを繰り返し、戦争法の実体化をこの時期に大きく進めている。

 トランプ、安倍にとって、政権への支持が揺らいでいる今、朝鮮危機は自らの政権基盤を強化し、さらに支持基盤のグローバル資本に利益を与える絶好のチャンスだ。金正恩(キムジョンウン)にしても自らの支配体制を維持するためにミサイル発射、核実験を繰り返さなければならないと考えている。三者に勝手にさせておくならば戦争に至る可能性がある。

 日、米、朝、韓は常に緊張状態にあったのではない。これまでに米朝、日朝、朝韓で交渉が持たれ、和平に向かっていたのだが、その都度合意が無効化されてきた。

 いま必要なのは、朝、韓、日の市民が戦争被害を受けないよう、交渉で朝鮮戦争の平和条約締結、国交正常化、東アジアの非核化を作り出すことだ。トランプ、安倍、金正恩に平和を要求するべき時だ。東アジア危機は、トランプや安倍を正当化するものではなく、彼らの戦争挑発路線をやめさせる必要性を多くの市民が認識しうる契機だ。

総選挙をいかに闘うか

 我々は今衆院選の最大争点は9条改憲阻止だと考える。一貫して市民と野党の共闘により改憲を阻止し、安倍内閣を打倒することができると主張してきた。9月26日には市民連合が4野党に対する要望書を提出した。しかし希望が結党され、共闘にかかわる新たな動きがでてきた。民進党、自由党の希望への合流だ。

 希望は何をしようというのか。

 まず代表の小池の評価だ。小池は日本会議のメンバーであり、改憲新自由主義者だ。「地方分権や情報公開などを総合的に考えるべきだ」(9/27毎日)として、改憲論議を進める立場だ。思想的立場を示すものとして、関東大震災での朝鮮人虐殺問題に対する態度がある。9月26日都議会本会議で「何が明白な事実なのかは歴史家がひもとくものだ」として虐殺の有無について明言しなかった。歴史的事実を認めないことで、朝鮮、韓国に対する排外主義に加担した。また重要政策として介護保険と保険外サービスを組み合わせる混合介護を主張した。混合介護は利用者の負担が増え、低所得者の介護サービス排除を推進する。厚労省が進める介護切り捨てと軌を一にするものだ。

 このように、小池は安倍と本質的な違いはない。グローバル資本主義の立場に立つ政治家であり、希望はグローバル資本のための党だ。

 この党に民進党前原は合流する方向を打ち出した。

 野党共闘を一層強化して議席を勝ち取るのではなく、希望の党に入り込み、議席をとろうとした。希望側は、「憲法改正反対」「安全保障関連法廃止」を主張する候補は公認しない構えだ。小池は「きわめてリアルな安全保障政策について来られるどうかだ。(旧社会党系は)そもそも来られないのではないか」と述べている(9/28毎日)。民進党は9月28日両院議員総会を開き、衆院選では民進党として候補者は立てず、希望の党の公認申請をすることを決めた。民進党は事実上解体する。民進党中堅がいうように「持参金と共に軍門に下る」のだ(9/26読売)。希望は不足する候補者と資金を同時に手にすることを狙う。

 連合の神津会長は「小選挙区で与党と野党が『1対1』で戦う姿を作り出し、『一強政治』に歯止めをかけるのを期待したい。衆議院選挙に向け、民進党と希望の党の間で連携を模索すべきだ」(9/27NHK)と述べた。明らかに連合会長は4野党共闘からの民進の脱落を喜んでいる。

野党共闘再強化で改憲阻止

 安倍は今がチャンスとみて解散したが、解散に反対する世論が圧倒的であり、朝日新聞調査で70%が解散理由に納得していない。毎日新聞調査でも64%が解散に反対だ。安倍の姑息な手口は多くの市民に見破られている。その結果安倍支持率は下がり、再び不支持が支持を上回った。安倍は選挙開始以前に森友、加計疑惑を隠し、改憲に進もうと画策したことへの批判にすでにさらされているのだ。そして同じ改憲勢力とはいえ希望にも追い込まれている。

 われわれの立場は明快だ。改憲阻止、安倍打倒をこの選挙で実現する。民進党・前原がどうであれ改憲阻止の市民・野党共闘を一貫して進める。民進党が分裂しようが、市民の力で改憲を止めるための共闘を推進する。すでに野党共闘が成立しているところでは民進党議員を動揺させず選挙勝利に邁進(まいしん)する。共闘が進まない場合でも改憲阻止の候補を当選させる。安倍と小池の間に本質的な差はない。この点を市民に深く訴えていかなければならない。われわれは自公も希望も拒否し、改憲阻止勢力で3分の1を超える議席を獲得する。
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