2017年10月20日 1498号

【衆院選「3極対決」はウソ/公約に見る改憲翼賛/安倍打倒は政策転換への第1歩】

 選挙戦が始まる。マスコミは「3極対決」の構図を描くが、選挙公約を見れば自民党と希望の党に違いはない。希望が民進党候補を選別した「改憲支持、戦争法容認」を見れば、対立軸は明らかだ。問われているのは、戦争か平和か、憲法を壊すのか活かすのか、そして貧困・格差を拡大するのかなくすのか、だ。自民、希望らの選挙公約を点検する。

改憲を掲げる

 10月2日に公表された自民党の政権公約は「特出しすべき政策を列挙した『政策パンフ』と幅広い政策をテーマごとにまとめた『政策バンク』」(岸田文雄政調会長)からなる。

 政策パンフの表紙は「この国を、守り抜く。」。朝鮮の核ミサイルを最大限に利用しようとする魂胆があからさまに示されている。真っ先に挙げているのは「北朝鮮の脅威」。「圧力強化を主導し、核・ミサイル計画を放棄させることを目指す」他、日米同盟の強化、ミサイル対処能力の強化などをあげた。

 以下、アベノミクスを礼賛する経済指標を掲げ「所得を増やす」「保育・教育の無償化」「地方創生」と続き、最後に「憲法改正」。ここには「自衛隊の明記、教育の無償化・充実強化、緊急事態対応、参院の合区解消など4項目を中心に、…初の憲法改正を目指す」とある。

 政策バンクが「経済再生」から始まるのと、整合していない。それは、世論の「空気」に合わせて順番を変えたからだ。9月25日、解散記者会見段階では「消費税の使い道変更」を解散の大義としていたが、分が悪いとみて「北朝鮮核ミサイル」を前面に出した。安倍晋三自民党総裁は街頭では朝鮮問題とともに、「愚直に、誠実に政策を実行する自公政権」と野党の離合集散を揶揄(やゆ)することに時間を使っている。国会答弁で「傲慢、不誠実」と批判を浴びた男の言葉だ。語る内容は聴衆の反応次第で今後も変わっていくだろう。

 政策バンク最後の「憲法」。8行程度の記述をそのまま「特出し政策」にあげた。16年の参院選では「改憲」を隠した安倍。今回掲げたのは、改憲はマイナスにはならない、改憲の流れはできると踏んだからだ。希望も維新も改憲勢力。改憲勢力3分の2は確保できると算段している。

自民、希望、維新も9条改憲

 希望の党の公約を見る。小池百合子代表は10月6日、基本政策となる「3本柱」と「12のゼロ」を発表した。3本柱は「消費税増税の凍結」「原発ゼロ」そして「憲法改正」だ。実のところ、自民党との違いはほとんどない。消費税凍結は「景気次第」で増税にかわる。原発は「再稼働容認」。核武装論者の小池が原発をやめるわけがない。

 では憲法はどうか。「9条をふくめ憲法改正論議をすすめます。国民の知る権利、地方自治の分権を明記します」と説明した。安倍改憲を促進する立場であることを明らかにした。

 希望の党と選挙協力をする日本維新の会の選挙公約「2017維新八策」には「時代に適した“今の憲法”へ」とある。「教育無償化、統治機構改革、憲法裁判所の設置」の項目とともに「国際情勢の変化に対応し、国民の生命・財産を守るための9条改正」と書き込んである。

 安倍改憲に消極的と言われる公明党は政策とは別に「憲法についての基本姿勢」を載せ、「憲法9条について」触れている。「自衛隊明記」の自民党案に「その意図は理解できないわけではない」と事実上肯定。「多くの政党の合意形成が図れるよう努めていくべき」と大勢に従う姿勢を示した。つまり自民、希望、維新に公明はついていく。

 かつて日本がアジア侵略戦争に突き進んでいったとき、「国家総動員体制」を支えるためにいくつもの政党は進んで解党し官製団体「大政翼賛会」に合流した。いま「安倍政権を倒すため」と解党し、改憲政党への合流をきめた民進党の姿は、そんな危険な歴史を思い起こさせる。民進党候補者がサインを求められた「政策協定書」は、「憲法改正」「安全保障法制」を受け入れろというものだった。改憲への宗旨替えを迫る「踏み絵」は、選挙の対立軸が改憲を許すかどうかにあることを浮かび上がらせた。

戦争、貧困との決別

 安倍は「国難突破解散」と称した。「国難」とは「少子高齢化」と「北朝鮮核ミサイル」だと言う。本人の意図するところとは違うだろうが、2点はグローバル資本主義の病状を浮き彫りにしている。

 「少子高齢化」問題は、社会保障を解体してきた弱肉強食の新自由主義政策を転換しなければ解決しない。「北朝鮮」問題は、「軍事力で平和を守る」とする戦争政策の行き詰まりをあぶり出した。自国にだけ「核抑止力=武力による威嚇」が許されるという理屈は通らない。

 安倍は解散を決めた時、反対する菅義偉(すがよしひで)官房長官に「国会が始まったら、またモリ・カケばかりだろ、もうリセットしたい」と漏らしたという(10/7毎日)。リセットすべきは、国家を私物化し、戦争路線を突き進む安倍政権と新自由主義政策なのだ。

 戦争政策、新自由主義政策というグローバル資本主義の害毒をさらにまき散らすことを許すのかどうか。争点はここにある。

 若年層の投票率は低く、自民党支持率が高い傾向が続いているという。若年層に貧困をおしつけ、命まで差し出せという安倍の政策を暴かなければならない。

 小選挙区289のうち240以上で立憲民主、共産、社民、無所属などの候補者一本化が進んでいる。市民・野党共闘の目的は、安倍が進める9条改憲、戦争国家づくり、貧困・格差を拡大する新自由主義政策の転換を図ることだ。衆院選勝利はその第1歩になる。    (10月9日)

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