2017年11月17日 1502号

【みる…よむ…サナテレビ(461)/2017年11月4日配信 イラク平和テレビ局in Japan/殺されるイラクの医師たち】

 イラクでは、医師が脅迫を受け、襲撃され、殺害される事件が頻発している。2017年9月、サナテレビはこの深刻な問題について、医師たちに取材した。

 人びとの命を救う医師が殺され続けているという状況は、すぐには信じられないかも知れない。しかし、最初に登場する外科医師モハメド・アリ・リソールさんは「医師に対する攻撃は、何年も前から始まっていました」と語る。「誘拐や殺人事件、抗争が続発する荒廃した社会と治安悪化が、医師への攻撃を増やしている」と言うのだ。

 歯科医師のザイード・ナディフさんは「法律が適用されず、医療スタッフを守ってくれない」と指摘する。医師を守る法律が制定されたものの、まともに適用されていない。

 心臓専門医のアマド・アリさんは、病院が混雑していると患者や病気によって待ち時間が30分の場合もあれば10分のときもあるという程度のことで、医師に暴力をふるう実態を訴える。

 もう一人の心臓専門医アマド・アゼットさんは、こうした状況がイラクの医療に深刻な影響を与えていることを心配する。「医療現場に暴力がはびこる現状を避け、国外に移住する医師がいる。難しい手術をして問題が起これば攻撃されるかも知れないなら、そんな手術を避ける医師がほとんどだ」と言う。これでは患者の命は守れない。

対策とらぬ政府

 医師の被害は、2003年の米軍と有志連合軍によるイラク占領に始まる。米軍は病院を無差別空爆した。一方、占領に抵抗するとの名目でイスラム主義勢力は、大学教授や医師などを狙い殺し続けた。歴代政権は対市民テロ攻撃にまともな対策を取ってこなかった。

 この現実に、アマド・アゼットさんは「政府の役割を活発にして、労働組合の役割を活発にすること」を求める。サナテレビは現実の深刻さを伝えるだけでなく、状況を変えようとの視点で取材している。

 医師に対する攻撃や殺害事件に対し、アバディ政権は医師を守る対策を全くとっていない。サナテレビは市民や労働者が立ち上がって医師を守り、市民の健康を守ろうと呼びかけている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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