2017年11月24日 1503号

【北海道の鉄道の再生と地域の発展をめざす全道連絡会 全北海道の闘い一つに】

 10月28日、「北海道の鉄道の再生と地域の発展をめざす全道連絡会設立総会」が札幌市で開かれ、約100人が参加した。

 冒頭、唐渡(からと)興宣・北海道大名誉教授があいさつ。「30年前、日本では国鉄分割民営化から始まった新自由主義が様々なひずみを生み出している。欧米でも新自由主義が強まったが、一方で欧州では交通権も確立してきており、新自由主義と交通権との矛盾が深まっている。今後は日本でも交通権の確立を目指さなければならない」として、今日のJR北海道による路線切り捨てにつながった国鉄分割民営化と新自由主義を批判。これに対抗する交通権確立の重要性を訴えた。

「バス転換飲めない」

 2015年1月の高波災害で鵡川(むかわ)〜様似(さまに)間が不通になって以来、JR北海道が「資金不足」を理由に復旧作業をせず放置されている日高本線の沿線を代表して、酒井芳秀・新ひだか町長が「地域にとっての鉄道」と題して講演した。「鉄道がなくなれば、鉄路を維持するよりも多くの費用をかけて地域を振興しなければならなくなる。鉄道は揺れもバスより少なく、交通弱者のためのこれからの交通機関だ。巨額の費用をかけて整備した鉄道を簡単にはがすわけにいかない」と鉄道路線を残す重要性を強調するとともに、沿線自治体として廃線阻止に向けた決意を示した。

 酒井町長はまた「30年前、私たちにとって大変冷たい分割民営化があった。3島JR(北海道・四国・九州)を犠牲にして本州3社(東日本・東海・西日本)を助ける分割民営化をやった。政府が3島JRに経営安定基金を設けたが、6年目くらいから金利が下降した。その時点で知らせてもらえれば対策も取れたのに、JR北海道は事実さえ公表しなかった。簡単にバス転換の提案は飲めない」と地方切り捨ての国鉄分割民営化とJR北海道の秘密主義、隠蔽体質を批判。JR北海道の鉄道路線に上下分離方式(注)を導入し、線路・施設は国が保有・管理を行うべきとした。



鉄道の社会性の承認

 「各地域におけるJR北海道の現状」と題して報告を行った武田泉・北海道教育大学准教授は「JR北海道が維持困難と発表した13線区の沿線とJR北海道との協議会もメンバーが自治体に限られていることが多く、協議会自体も非公開。商工会、観光協会、住民団体、PTAが入ることも多い本州と対照的だ。徹底的な合理化で札幌直通列車がなくなり、長距離客は都市間バスに移った。名寄から旭川へ通院もできない事例が生まれている」と指摘。住民の声を協議会に反映させる必要性を指摘した。また「災害で運行できない路線が同時多発的に発生する現状には、『鉄道財源確保法』など新しい政策や仕組みが必要だ」と訴えた。



 宮田和保・北海道教育大学名誉教授は「スイス国鉄の赤字は3千億円を超えるが、政府が穴埋めしている」とヨーロッパの実情を報告。公共交通を含む公共サービスの地域的、社会的役割の承認と「ダイヤを一方的に変更し、自治体が乗換の利便性を求めても無視するJRに社会的監視、情報公開などの縛りをかけていくこと」が必要とした上で、国が運営を私企業に委ねたまま放置している日本の鉄道政策を批判。公共性を持たせる上で必要な財源は北海道開発予算の活用などを挙げた。



 この後、会場参加者が討議。(1)JR北海道に全面的情報公開(2)自治体に協議会の内容の公開、を求める他、(3)北海道への申し入れや交渉(4)国交省、国会議員、各政党に要求する上京行動(5)国主体の上下分離を求める自治体決議追求―を今後の方針として決定した。

オール北海道で廃線阻止

 昨年11月、JR北海道が全営業キロの半分に当たる1200キロを「自社単独では維持困難」と発表してから1年。JR北海道は各線区沿線地域との間で個別協議入りを強行しようとしてきた。また総会の全発言者がJR北海道の秘密主義体質に言及した。JR北海道の情報隠蔽や分断策動を乗り越え、多くの沿線地域が「路線維持」「分割民営化見直し」で結集したことにこの日の総会の大きな意義がある。廃線阻止の闘いをオール北海道の団結した闘いに引き上げるため、全道から広く世話人を集め、会を軌道に乗せることが今後の課題だ。

【注】上下分離方式 鉄道を列車運行(上)と線路・施設の保有(下)に分離し、下を国などの公的主体で行うこと。

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