2018年02月23日 1515号

【日韓市民共同声明1000人賛同へ 韓国市民の闘いは(2) 密陽(ミリャン)高電圧送電塔反対の闘い 生活と環境を破壊する原発の電気は通すな】

 韓国には23基の原発があり、さらに7基の原発の新設計画が進められている。釜山(プサン)からわずか約30Kmにある古里(コリ)・新古里(シンゴリ)には計6基の原発が集中し、1基が工事完了、2基が建設中である。

 2014年、新古里原発の電気を送る765kV超高圧送電塔が完成し、送電ルートになった密陽(ミリャン)にも送電塔が林立した。「電気は涙に乗って流れる」と言われるほど多くの涙が流される中で送電塔は建設された。今、送電塔からの騒音と電磁波の影響で健康を害する住民は後をたたない。

 密陽地域に52基の送電塔建設計画が出されたのは2005年。住民たちは予定地に毎日座り込んで闘った。政府と韓国電力は、反対住民に対し、工事妨害として損害賠償裁判を起こし、一方で補償額を大幅に引き上げて住民を分断していった。その中で工事に抗議して2人の住民が自死した。

 2011年の福島第一原発事故を契機に、韓国でも原発のずさんな管理が明らかになり脱核運動が高まった。2014年4月のセウォル号惨事により、命よりも金儲けを優先する社会でいいのか、の声がさらに広がった。「世界は福島から、韓国は密陽から脱核を学ぶ」というスローガンが叫ばれ、密陽のおばあさんたちは脱核デモの先頭に立った。全国から密陽に「脱核・希望のバス」が集まった。

 しかし、送電塔建設工事は強行された。2014年6月11日には、密陽市職員200人と警察2千人余りによって、最後の座り込み現場4か所と団結小屋4か所が強制撤去(行政代執行)された。圧倒的な警察の暴力に対し、住民たちは体を鎖でつないで抵抗したが、次々と排除されていった。早朝から11時間かけて行われた強制執行で、多くの人びとが傷つき現場で拘束された。その日のうちに樹木が伐採されていくのを、住民は涙をのんで見守るしかなかった。同年9月すべての送電塔が完成し、12月に送電が開始された。その送電塔一つひとつに密陽のおばあさん、おじいさんたちの涙とため息がしみついている。

日韓連帯で反原発を

 送電塔は首都圏への電力供給のためだとされたが、首都ソウルでは朴元淳(パクウォンスン)市長が「原発1基分の電力消費削減」を掲げて政策をすすめてきた。電気は足りているのだ。

 理不尽で暴力的な国のやり方は沖縄と同じだ。密陽のおばあさんたちが、伐採されそうな木にしがみつき「私たちは死んでもいいが、未来の世代にためにこの自然を守りたい」と泣きながら叫ぶ姿は、高江の住民たちの姿と重なる。

 昨年5月に就任した文在寅(ムンジェイン)大統領は、建設中の新古里5号、6号機をいったん中断した。だが、10月には市民参加の公開討論で約6割が建設を支持したことを理由に建設を再開した。公開討論の場で原発推進派は、日本での原発再稼働を根拠に原発の安全性と経済性を説明した。日本の原発再稼働が韓国で原発推進の理由にされたのである。

 しかし、密陽の住民たちはあきらめず脱核運動の先頭に立っている。「ここの生活の場を守って、私たちの未来の世代のために送電塔を抜き去る。原発からの電気を密陽で遮断し、原発をとめ、すべての核が無くなるまで闘争をやめない」と語る。反原発の闘いでも日韓連帯をすすめていかなければならない。

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