2018年03月02日 1516号

【2018春闘 安倍政権下で賃金低下の一途、内部留保はき出せ、最低賃金1500円へ】

 2月7日に厚生労働省が発表した毎月勤労統計調査の速報値によれば、2017年の実質賃金は前年比0・2%の減少。新聞各紙の「実質賃金2年ぶりマイナス」との報道は安倍政権に媚びている。17年と15年はマイナスだが、他の年はプラスだった≠ニ誤って想像させる印象操作だ。

賃金低下と肥え太る大企業

 事実は、第2次安倍政権5年間で実質賃金がプラスになったのは16年1回だけで、あとは全部マイナスだ(図1)。15年の実質賃金指数を100とすると、民主党政権最終年12年の実質賃金指数は104・8、昨年は100・5で4・1%も減少している。

 

 政権発足時の12年と16年を比較すると、G7諸国と韓国の8か国中、日本の賃金だけが大きく低下している。OECD(経済協力開発機構)の世界経済見通しによると17年の日本の実質経済成長率は1・5%と世界経済の半分未満で、米国やEU諸国と比べても特別に低く、特異な存在になっている。その要因は、実質賃金の低下による、GDPの6割を占める個人消費の低迷にある。

 一方、企業経営状況を財務省法人企業統計によって賃金と同じ年度で比較してみると、売上高が5・9ポイントしか上昇していないが、経常利益は54・7ポイントも増加している。内訳を見ると、国内生産活動の成果である営業利益よりも海外子会社や株・債券からの収入である営業外収益が92・7ポイント増となっている。税引き前当期純利益が70・7ポイント増えたにもかかわらず、納税額は17・4ポイントしか増えていない。

 これは法人税の減税によるものだ。法人実効税率は14年度34・62%から16年29・97%へ引き上げられている。加えて「研究開発減税」「海外子会社配当非課税制度」等の減税や優遇措置で、グローバル資本はほとんど税金を納めなくていい仕組みとなっている。

 以上の結果として、企業の内部留保(利益準備金、積立金、繰越利益剰余金の合計)は12年度333・5兆円であったものが4年間に69・9兆円増えて16年度には403・4兆円となった(図1)。17年度年次経済財政報告によれば、内部留保率(=利益剰余金/総資産)の国際比較で日本はEU15か国の倍近くになっている。内部留保への批判の強まりに、グローバル資本を代表する経団連の経営労働政策委員会報告ですら「『人材への投資』も含めて一層の活用」と言わざるを得なくなっているほどだ。

 アベノミクスは、労働者の賃金を大きく引き下げ、大企業減税で企業の内部留保を大きく増加させ、消費を冷え込ませ経済を破綻させている。

収入減でエンゲル係数上昇

 総務省家計調査の勤労者世帯を見ると、長い間21〜22%で推移していたエンゲル係数が、安倍政権の4年間で1・8ポイント上昇して24・4%となった。近年なかった現象だ。エンゲル係数は消費支出に占める食費の割合で、数値が高いほど家計に余裕がないことを示す。エンゲル係数の上昇を所得階層別にみると、第1分位(年収341万円未満)は1・9ポイント上昇して26・6%、第2分位(341〜493万円)は2・2ポイント上昇して26・5%など。こうした低所得層ほど深刻な打撃を受けることはいうまでもない(表1)。



 エンゲル係数上昇の第一の要因は収入の減少だ。家計調査によると、「勤め先収入」が、第1分位で7・37ポイント、第2分位は5・53ポイントも減少しているのに対し、第5分位は逆に1・49ポイント増えている。第二の要因は、所得再配分が不十分・不公平で、収入から税金や社会保険料などを差し引いた「可処分所得」の格差が大きく拡大したことである。

 18春闘は5年目の「官製春闘」と称され、安倍は経団連に「3%賃上げ」を要請している。だが、3%で労働者の深刻な状況は改善しない。安倍政権発足の12年水準に賃金を戻すだけでも、最低約7%2万2千円程度が必要となる。内部留保一つをとっても賃上げ原資は十分にある。

 非正規雇用労働者など低所得の労働者の生活改善のためには、最低賃金をただちに時給1500円にすることが求められている。最低賃金1500円は非正規労働者などが結集するコミュニティーユニオンの共通方針となっている。大幅賃上げとともに最賃1500円、大企業優遇課税廃止、法人税引き上げを求め、18春闘を闘おう。
ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS