2018年03月02日 1516号

【米軍ヘリ部品落下/保育園園長・父母が訴え/子どもたちに安全な空を/憲法より日米同盟が上なのか】

 沖縄・宜野湾市の緑ヶ丘保育園の神谷武宏園長と母親6人は2月13日、政府要請行動後、衆院第2議員会館で開かれた院内集会に臨んだ。

 神谷園長は保育園にとっての園庭の大切さから語り始めた。子どもたちは園庭でのびのびと遊び、遊びを通してさまざまなことを学ぶ。緑ヶ丘保育園では雨の日も園庭に出て思い思いに雨と戯れ、雨の恵みを全身で感じとる。

 「昨年12月7日午前10時20分頃、雨ではないものが降ってきた」。激しい音を立て、トタン屋根に大きな凹みを作った。園庭では2〜3歳児20人以上が遊んでいた。

 米軍は翌日、落下物をCH53大型輸送ヘリの部品と認める一方、飛行中に落とした可能性は低いと説明。神谷園長は驚いた。ドーンという衝撃、モヮーッとするエンジンの焦げた臭い。大きく跳ね上がる物体を見たという証言がいくつもある。

 米軍発表のあと、誹謗中傷の電話・メールが来るようになった。「自作自演がバレたな」「ヘリは飛ぶなと言うが、誰が日本を守るんだ」…。神谷園長は語気を強めた。「私たちは米軍からの落下物と誹謗中傷という二重の被害を受けている。米軍が事故と認めないなら、これはもう“事件”、殺人未遂事件だ」



 数日後、1959年6月30日に起きた宮森小学校米軍ジェット機墜落事故の遺族が保育園に訪ねてきた。宮森小事故で米軍は、1家族に1000ドルの賠償金を支払うと言ったそうだ。1人の母親が答えた。「あなたの息子をここに連れて来なさい。あなたの息子を殺して私が1000ドル、あなたに払うさぁ」。母親の悲しみ、米軍の傲慢さ―当時も今も変わらない。

 神谷園長は「沖縄はいまだ占領地のよう。しかし、沖縄もまた日本国憲法のもとにあり、人間の命の尊厳を保障されているはずだ」と指摘し、「日米安保は日本国民の8割以上が賛成。しかし、その日米安保の弊害はどこで起きているか。東京の人たちが米軍基地の脅威にさらされているか。日米地位協定の弊害を東京の人たちは感じているか」と問いかける。

 そして、こう呼びかけた。「これは不平等だ。沖縄の基地問題は沖縄の問題ではない。日本の問題であり、あなたの、あなた方の問題だ。雨以外に何も落ちてこない平和な空を返してほしい。日本政府は日本国憲法にのっとって国民の命に、沖縄の人びとの命にも、向き合ってほしい」

 父母会会長の宮城智子さん、副会長の知念有希子さんと与那城千恵美さんら母親6人も次々にマイクをとる。

 「私たちの要望を他人事と思わず、自分の子や孫に置きかえて考えてみてほしい。想像力をめぐらせれば当事者でなくても思いは共有できるのではないか」

 「各省庁は米軍を守るような決まり文句しか言わない。私たちの子どもは誰に守ってもらえばいいのか。助けてくれるなら、どこへでも行く」

 「みなさんは子どもを『いってらっしゃい』と安心して送り出せていると思う。私たちはそんな当たり前のことが今、できない状況にある」

「命をかけて守る」

 「子どもの身に降りかかり、ここは危険なんだと気付かされた。今まで無関心だったことを後悔した。私は命がけで産んだ子を命をかけて守る」

 「ハワイに行くと、基地は住宅街から遠くにあり、ホノルル上空は戦闘機が飛んでいなかった。私たちの安全は誰が守ってくれているのか」

 「子どもたちは安心・安全に園庭で思いっきり体を動かし、生活力を身につけてほしい。米軍機の保育園上空の飛行禁止を強く求める」

 質疑応答では、「本土の私たちが何をしたらいいか」との質問に、神谷園長が「ご自分で考えてください。この現状を見てもそういう質問が出るのはほんとに情けない」と応じる場面があった。

 集会主催団体の一つ、日米地位協定見直しなどに取り組む「沖縄等米軍基地問題議員懇談会」の近藤昭一衆院議員(立憲民主党)は「沖縄のみなさんが安心して暮らせる生活を取り戻さなくてはならない。戦後ずっと同じ状況が続いている。憲法の上に日米地位協定、日米同盟があってはならない」と述べた。

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