2018年03月02日 1516号

【差し戻し審で不当判決 国際自動車残業代裁判/裁量労働制拡大の先取りだ】

 タクシー大手4社の1つ、国際自動車に対し、実質的に払われていない残業代の支払いを求めた裁判の差し戻し審で東京高裁は2月15日、原告の請求を退ける不当判決を言い渡した。

 国際自動車では、名目上残業代とされる額と同じ額を歩合給から差し引き、いくら残業しても給料総額が変わらない賃金制度をとっていた。これは労働基準法37条(時間外・休日・深夜の割増賃金)違反にあたるとして全国際自動車労働組合(国際全労)の組合員が提訴。一審・二審は組合側が勝訴し、上告審で最高裁が「通常の労働時間の賃金部分と労基法37条の割増賃金部分とが判別できるか否か」などを審理しなおすよう高裁に差し戻していた。

 判決は棄却の理由として「歩合給は成果主義に基づく。労働効率性を評価に取り入れ、労働時間の長短で歩合給の額に差を生じさせるのは不合理ではない」「タクシー乗務員は業務遂行で自主性・独立性が高く、個人タクシーと同様に個人事業主と変わらない特質を持つ」「売り上げを伸ばすため長時間労働に陥りやすい。歩合給から残業代を控除することで、非効率的な時間外労働を抑止できる」「乗務員の95%が加入する多数派組合が承認している」などを挙げる。

 判決後の記者会見で指宿昭一弁護士は「間違った判決だ。成果主義や労働効率性を持ち出せば労基法37条をクリアできるというのは、労働法の無理解。最高裁は労基法37条について厳格に、例外を許さない判断をしており、最近も高裁の労働者敗訴を覆す判決を出している。逆転できる可能性は十分ある」と指摘した。

 国際全労の伊藤博委員長は「こんな判決が世の中で通ると経営者はやりたい放題。労働者にはサービス残業やいじめ、自殺、ノイローゼといろんな問題が出てくる。前に向かって、真っすぐ上を向いて進むことが大事。これからが本当の闘いだ」と決意を語る。

 国際全労が加入する首都圏なかまユニオンの石川正志副委員長は「成果主義や効率性の強調は、今の『働き方改革』=労働法制改悪の考え方と全く同じ。タクシー労働者にも裁量労働制を持ち込み、営業職も含めて残業代ゼロが当たり前の時代をつくる動きを先取りする安倍忖度(そんたく)判決だ」と批判した。

 現役タクシー運転手で原告のTさんは「そもそもタクシー乗務では、効率よい仕事などできない。乗務員はお客を選べない。帰庫直前に都外まで行くお客を乗せることもある。残業せざるを得ない。裁判官はそこが理解できていない。不当判決であり、最高裁まで闘っていく」と話す。

 組合側は直ちに上告した。最高裁で逆転勝訴をかちとる闘いを強めよう。

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