2018年03月14日 1518号

【1518号主張 裁量労働拡大削除へ追い込む/「働かせ方大改悪」は撤回だ】

自滅した安倍首相

 裁量労働制の対象拡大が「働き方改革」関連法案から削除された。過労死家族会をはじめ世論が強く反対し、6野党が結束し追及した。市民の運動と国会を結んだ闘いが一部撤回を勝ち取った。

 発端は安倍首相自身の「一般労働者より裁量労働制で働く人の労働時間が短い」とした答弁だ。労働政策審議会議論の前提で法案提出の根拠とされた厚労省調査データに、次々と疑義が指摘された。1日の残業が「45時間」等のねつ造やデタラメは千件近くに上り、安倍は墓穴を掘った。

 「裁量労働」の言葉とは裏腹に、業務量に関して労働者に裁量はない。上司による労働時間管理がなされず、何時間働いても労働時間は同じとされる。制度を悪用され、月に188時間、209時間もの残業を押し付けられ過労死へ追い込まれたNHK記者の遺族は「裁量労働制の拡大は長時間労働を野放しにし、ずさんな労務管理の言い訳になる」と警告する。

 2月25日には新宿で裁量労働制拡大に反対する緊急デモが行われ、千人が「毎日、毎晩残業させるな」「働いた分の金くらい払え」と声をあげた。上西充子法政大学教授は「裁量というが労働者は仕事を断れない。労働強化につながる」、参加の女性は「デザイナーとして裁量労働制で1日13〜14時間も働いていた。裁量なんてない」と告発する。

 実態を覆い隠し、ねつ造データを根拠に労基法改悪をおこなう安倍政権に、労働法を論じる資格はない。

奴隷労働への大改悪

 「高度プロフェッショナル」制度は、裁量労働拡大に輪をかけて悪質だ。一定年収(1075万円)を超える労働者のいっさいの労働時間規制をなくす。残業割増なし、休日・深夜割増なし、労働時間に応じた休憩時間適用なし。健康確保措置と言うが、4週で4日休日を与えればいいだけで最初の4日を休日とすれば残る24日間は24時間働かせることも可能。定額働かせ放題どころか、人を人と思わない悪魔の奴隷労働制度だ。

 経団連は法案提出前から年収要件の緩和を繰り返し求めている。一度成立すればなし崩しに年収要件が引き下げられ、対象が拡大される。

 「働き方改革」関連法案について問う世論調査では全体で69・1%、自民支持層ですら60・8%が「今国会で成立させる必要はない」と答えている(3/5東京)。政府の言う「罰則付き時間外労働の上限規制」は過労死レベルの残業を合法化し、「同一労働同一賃金」は劣悪な非正規労働の賃金へと低位平準化するものにほかならない。「働かせ方大改悪」法案はすべて撤回だ。

内閣総辞職へ追い込もう

 グローバル大企業は、過去最高水準の400兆円を超える内部留保を蓄える。財界の欲望にこそ強く規制をかけ、儲けた富を労働者に還元させなければならない。

 世論の大きなうねりと市民・野党の結束で政治局面を変えることができる。森友問題も公文書改ざん疑惑で新たな火の手が上がっている。安倍内閣を総辞職へ追い込もう。今回、法案提出前に一部削除させたように、労働法制大改悪の一括法案提出阻止、憲法改悪阻止へ、世論の高まりをつくり攻勢をかけよう。

       (3月5日)
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