2018年03月14日 1518号

【違法工事差し止めよ 不当弾圧許すな 民主主義破壊を問う2つの判決へ 辺野古と全国結ぶ闘いを】

 3月、辺野古新基地建設阻止の闘いは重要局面を迎えている。那覇地裁で争ってきた2つの裁判の判決が連続して言い渡される。3月13日は沖縄県による辺野古の岩礁破砕差し止め裁判、14日には山城博治さんなど3人への不当弾圧裁判の判決だ。

 どちらの裁判も、辺野古新基地建設阻止の今後の闘いの行方にかかわるとともに、安倍政権による権力を使った無法行為を跳ね返す運動にとって重要な意味を持つ。2つの裁判の意義を考える。

県民無視の違法を追及

 3月13日判決の沖縄県による工事差し止め裁判は、国が岩礁破砕許可を得ずに工事を進めるのは違法として昨年7月に那覇地裁に提訴。同3月末に辺野古沿岸域の海底の岩礁破砕許可期限が切れたにもかかわらず、沖縄防衛局が更新手続きもしないまま4月末から護岸工事を始めたことに対し、県が国を訴えた。

 水産資源保護法と漁業法に基づき、県の漁業規則に岩礁破砕については知事の許可が必要となっている。しかし、国は名護市漁業協同組合が辺野古の漁業権を放棄する決議をあげたことを理由に更新手続きは不要として工事を強行している。水産庁長官を官邸に呼び出し、岩礁破砕許可の従来の見解を変えさせたのだ。提訴後も、県は岩礁破砕許可申請をするよう何度も沖縄防衛局に行政指導するが、一切無視を続けている。

 この裁判は、安倍政権の司法への介入により事実上三権分立がない状態で争うものだ。予断は許されない。翁長雄志(おながたけし)知事は提訴後、「国は辺野古案件のために恣意的に漁業権の見解を変えた。法治国家の在り方からはほど遠い」と国の姿勢を批判し、「新基地建設の是非そのものを問うものではないが、県民の声を無視する国の姿勢が問われている」と表明。国の不当な強権的姿勢を浮かび上がらせ断罪する訴訟の意義を強調した。

 安倍政権―国家権力に、沖縄県という一地方自治体が、辺野古新基地に反対する内外の多くの声を受けて対峙する、民主主義をかけた闘いだ。

萎縮を狙う山城さん裁判

 14日判決の裁判は、辺野古新基地阻止へ闘ってきた山城博治沖縄平和運動センター議長、稲葉博さん、添田充啓(あつひろ)さんの3人を刑事事件の犯罪者に仕立て上げようと検察が仕組んだものだ。山城さんと稲葉さんの2人を中心とした2016年1月の辺野古のキャンプ・シュワブゲート前での事件と、山城さん、添田さんらの2016年8月の高江ヘリパッドN1裏テントでの事件に分かれている。

 山城さんと稲葉さんは、辺野古ゲート前にコンクリートブロックを積み上げたことが「威力業務妨害」とされ起訴。添田さんと山城さんは、沖縄防衛局職員への「公務執行妨害・傷害」、山城さんは有刺鉄線を切断した「器物損壊」罪で起訴された。山城さんに2年6か月、稲葉さんに1年、添田さんに2年が求刑された。裁判の陳述で、山城さんは、ブロックを積んだことと有刺鉄線切断については事実として争わず、公務執行妨害と傷害については否認し、裁判の争点となった。

 公判では、山城さんは「沖縄戦後史上かつてない1千人もの警察権力の行使。警察官がまるで暴徒化し、正当な公務性を欠き、とても容認できるものでなかった。その無謀を止めようとしただけであって、問われるべきは、政府・沖縄防衛局だ」ときっぱりと証言した。傷害事件の原告、防衛局職員を診察した医師は「通院は1日だけ、2週間の加療期間の診断は本人の希望により書いた」と証言し、傷害事件にすること自体不当であることが明らかになった。

 新基地建設阻止の運動がこれ以上国内外に広がることを恐れた安倍政権は、容疑を小出しにして山城さんたちを長期間勾留。ゲート前の運動から切り離し、辺野古や高江に来れば3人同様に逮捕されると運動の萎縮を狙った。全くの微罪で5か月以上も異常に長期勾留したことに権力の狙いがあらわれている。

 裁判進行もひどいものだった。証拠として提出されたビデオが未編集で上映できず、その担当検察官は退職。裁判長の病気で2度公判が中止され結局辞任。はては、証言者はすべて遮断つい立てで隠されるなど、通常はありえない。

 共謀罪の先取りと言われたこの事件は、今後の権力犯罪との闘いの起点ともなる。無罪判決を求める要請署名は、3月9日に21万7千筆が那覇地裁に提出され、国内外で計28万1千筆に上った。

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 2つの判決次第では、「訴訟の行方に注視する」としていた渡具知(とぐち)武豊名護新市長が、稲嶺前市長が挙げていた新基地建設阻止のための市長権限をことごとく解除してくることも予想される。ゲート前と海上での阻止・監視行動を強め、安倍政権の暴走を一刻も早く止める全国的な闘いが求められる。(N)



 
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