2018年03月21日 1519号

【未来への責任(245)進む元素分析による遺骨特定(下)】

 2月8日に参議院議員会館で開かれた厚生労働省との意見交換会は、相原久美子参議院議員の紹介により行われ、韓国からは太平洋戦争被害者補償推進協議会チーム長の金英丸(キムヨンファン)さんが参加した。相原議員のほか、森本真治(民進)、伊波洋一(沖縄)、福島みずほ(社民)各議員と議員秘書5人が参加。日韓マスコミをはじめ市民も参加した。

 会議は冒頭、要請書の提出の後、厚労省援護課の吉田課長から回答が行われた。「安定同位体を用いて遺骨の国籍や出身地域を特定する方法は前例がない」との回答を受けて議員から質問が飛んだ。

(議員)「政府が関わらず民間がやったということか? 国は関与していないのか? 今度の予算で安定同位体の研究費がついたということだが具体的にどのようなものか?」

(厚労省)「今回の法律で国の責務が明記されており、国は関与するが、沖縄の場合日常の造成工事の中でも遺骨が発掘されるため沖縄県に保管、管理を委託している。大規模な掘削を伴うものは国が関与している」

(議)「県に委託する中で安定同位体での判定を琉球大学に委託したということか?」

(厚)「そう。県に委託している骨で、鑑定を実施している中でどうも米兵と思われる遺骨が発見され、染田先生が安定同位体分析を用いて米国にお返ししたということ」

(議)「手法は厚労省として認めているのですね」

(厚)「私どもは否定しているわけではなく、今回は染田先生のご厚意によってやっていただいたと承知している。その結果間違いのないものとして引き取られたと認識している」

(議)「否定していないということは、手法での実績があるのだから今後やっていくということでいいですね。それと来年の予算の話だが」

(厚)「今回、安定同位体で予算が500万円ついている。フィリピン現地遺骨混入の件で安定同位体の判定を行うための予算措置です」

 …以上のやりとりの通り、回りくどい言い方ではあったが、厚労省として安定同位体比分析の有効性を認め、分析結果に基づいてアメリカに遺骨を渡したことや、今後の実施に向けた予算化を認めた。

 これは大きな変化である。今後、韓国政府からの要請があれば、日本政府として応じざるを得ないからだ。そして遺骨が韓国に帰れば、韓国には国防部遺骸発掘鑑識団という専門チームで遺族との詳細なDNA鑑定が可能なため、個人の特定が現実的になる。

 さっそく3月には韓国国会内で「韓国人強制動員犠牲者遺骨奉還のための国際会議」が開催される。さらに安定同位体比分析やDNA鑑定の研究者からの情報を得ながら「遺骨を家族・故郷の元へ」の活動を継続したい。

(「戦没者遺骨を家族の元へ」連絡会 古川雅基)

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