2018年03月21日 1519号

【財務省、森友文書改ざん/「昭恵夫人」「日本会議」を全削除/権力犯罪の主犯は安倍だ】

 やはり安倍案件隠しだった―。学校法人「森友学園」との国有地取引に関する決裁文書の改ざんを財務省がついに認めた。元文書にあった安倍晋三首相夫妻らの名前を、国会議員への開示文書では消していたのである。首相夫妻を守るために国家機関が公文書偽造まで行った。これは未曽有(みぞう)の権力犯罪であり、内閣総辞職に値する。

きっかけは安倍答弁

 財務省が今回まとめた調査報告書によると、改ざんがあったのは近畿財務局が作成した2015年の貸付契約と16年の売買契約に関する決裁文書など計14件。森友学園をめぐる疑惑が国会で焦点化した昨年2月下旬から4月の間に、約290か所が意図的に改ざんされた。

 森友疑惑の核心は、同学園が開設を予定していた小学校の用地として、国有地が格安売却(約8億円の値引き)された件である。通常ではありえない優遇措置の背景には、政治家の関与、口利きがあるのではと疑われた。

 疑惑の筆頭は安倍首相夫妻である。彼らは森友の軍国主義教育の賛同者だった。昭恵夫人に至っては小学校の名誉校長を引き受けていた。この事実を国会で指摘された安倍首相は逆上し、「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」と言い切った(昨年2月17日の衆院予算委)。

 これがウソの積み重ねの始まりだった。財務省が国会で虚偽答弁を連発したのも、決裁後の文書を改ざんしたのも、すべては致命傷になりうる発言をしてしまった安倍首相を守るためだったのだ。

 実際、改ざん後の文書では、「本件の特殊性」といった文言や昭恵夫人に関する記述がすべて削除されていた。たとえば、彼女が「学園の教育方針に感涙した」ことが産経新聞に取り上げられたとの記述や、「夫人からは『いい土地ですから、前に進めてください』とのお言葉をいただいた」という学園側の発言が消されていた。

 日本最大の右翼組織「日本会議」関連の記述も削除された。元文書は学園の籠池泰典理事長(当時)を「日本会議大阪」の関係者と紹介しており、「日本会議国会議員懇談会」の役員として安倍首相や麻生太郎財務相らの名前も記載していた。これらはすべてカット。安倍首相の極右人脈絡みの案件であることを財務省が意識していた事実を隠そうとしたのである。

 首相夫妻が肩入れする極右学園の小学校設立を手助けするために国政が歪められた。その証拠物件とならないように文書が改ざんされた。主権者を欺き、歴史を裏切る権力犯罪の主犯は財務省の役人ではない。内閣総理大臣・安倍晋三その人である。

民主主義を破壊

 改ざん後の森友文書は国会だけではなく、会計検査院にも提出されていた。こんなウソ報告がまかり通るようでは民主主義国家とはいえない。公文書を「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るもの」と位置づけた公文書管理法の理念を安倍政権はまったく無視している。

 歴史学者の磯田道史が指摘するように、公文書は国家・国民にとって病状を示すカルテといえる。カルテが改ざんされたり、なかったことにされたらどうなるか。病気が進行し死んでしまう。国家の場合、多くの人命が失われるということだ。

 そうした危険行為を安倍政権は平然と行ってきた。南スーダンPKO(国連平和維持活動)部隊の日報隠蔽(いんぺい)がそうである。武力紛争の発生を伝える現地報告を握りつぶし、情報公開請求に対して「廃棄した」と偽った。戦争法にもとづく新任務「駆け付け警護」の実績づくりのために、本来なら部隊撤収となる事態の証拠を覆い隠したのだ。

 自衛隊が殺し合いの当事者にならなかったのは偶然でしかない。国家の情報隠蔽と戦争遂行がコインの両面の関係であることがよくわかる。

ルーツは戦犯逃れ

 加計学園問題の「総理のご意向」文書といい、裁量労働制に関するデータ不正といい、安倍政権は捏造(ねつぞう)と隠蔽の常習犯である。連中の行動をみていると、この政権の特徴である歴史修正主義が根本にあるのではと思えてしまう。

 1945年8月、日本政府はポツダム宣言の受諾を閣議決定するとともに、重要機密文書の焼却を決定した。ポツダム宣言がうたう「すべての戦争犯罪人に対する厳重な処罰」を妨害するためだ。

 当時、内務省の官僚だった奥野誠亮は次のように証言している。「会議では私が『証拠にされるような公文書は全部焼かせてしまおう』と言った。犯罪人を出さないためにね」(2015年8月11日付読売新聞)。軍隊「慰安婦」制度など日本の戦争犯罪を立証しようとしても、公的資料がほとんど残っていないという壁にぶつかる。それはこの時の証拠隠滅のせいだ。

 奥野は後に自民党国会議員となり、歴史修正主義グループの中心人物として活動した。安倍首相にとっては極右思想の師匠筋にあたる。「都合が悪い文書はなかったことにする」手口も師匠から受け継いだのだろう。

 さて、政府は森友文書の「書き換え」は認めたものの、「誰が指示したのか。動機は何か」という核心部分には口をつぐんでいる。財務省に責任を押しつけ、逃げ切るつもりらしい。改憲ロードの途中で挫折するわけにはいかない、というわけだ。

 卑怯なり、安倍晋三。生き恥をさらして政権の座にしがみつくのであれば、私たち主権者の手で引きずりおろすまでだ。    (M)



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