2018年03月21日 1519号

【「ニュース女子」は人権侵害認定/BPO放送人権委が東京MXに勧告/「ヘイトからテロへ」 みんなの力で止めたい】

 東京MXテレビの「ニュース女子」がウソとデマで沖縄の基地反対運動を中傷した問題で、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会は3月8日、「のりこえねっと」共同代表・辛淑玉(シンスゴ)さんへの「名誉毀損(きそん)の人権侵害が成立」と認定する決定を公表。MXに対し、決定の主旨を放送し、再発防止の努力を一層重ねるよう勧告した。人権侵害に関わる「勧告」は、5段階ある委員会の判断の中で最も重い。

 「のりこえねっと」が開いた記者会見で、金竜介弁護士は「今回の決定でここがなかったら非常に不満が残っただろう」と、決定が番組の人種差別主義を指摘した個所を読み上げた。

 「犯罪行為を繰り返すと描かれた反対運動と結びつけて『朝鮮人はいるわ、中国人はいるわ』『親北派ですから』などと特定の国籍や民族的出自を論じ、申立人が在日韓国人であることに関連して、人種や民族を取り扱う際に必要な配慮を欠いていた」

 実際、番組放送後、脅迫や嫌がらせの手紙・メールが相次いだ。辛さんは昨年11月以来、「極右テロからの自衛」のためドイツで暮らす。事実上の「亡命」先から戻って臨んだ記者会見で次のように語った。

 「民族差別にも触れたこの決定を聞き、涙が出た。

 MXのやったことは罪が深い。ネットのデマを、保険を付けて社会に飛び立たせた。メディアがターゲットを名指しし、それに共感した人がテロ行為に及ぶ。朝鮮総連本部が襲撃され、ヘイトからテロに確実に時代は移行した。扉を開いたのはMXだ。

 ネットは散弾銃。打ち込まれたら八つ裂きになる。今回のことで言えば、複雑骨折みたいな感じ。私の変えることのできない出自を使って沖縄を叩く。自分がストレートに叩かれるより何倍も堪(こた)えた。日本の社会でものを言う朝鮮人の女はゴキブリ以下に扱われる。

 みなさんと一緒に止めたい。言論で止めたい。そのきっかけをBPOがくれたことに心から感謝する」

 同日夜、MX本社前では「沖縄への偏見をあおる放送をゆるさない市民有志」が「ニュース女子」放送3月末打ち切りの発表を歓迎し、最後の抗議行動。引き続き訂正と謝罪を求めた。辛さんも姿を見せ、「きょうはみんなの力でかちとれたうれしい結果だった」。何度も何度も「本当にありがとうございます」と繰り返した。

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