2018年03月28日 1520号

【森友文書改ざん事件/隠された安倍夫妻の罪/佐川喚問で幕は引けない】

 森友文書改ざん事件は佐川宣寿(のぶひさ)理財局長(当時)の国会証人喚問で幕引きはできない。内閣支持率急落、国会周辺抗議行動に示される市民の怒りは高まる一方だ。誰もが「火元は安倍夫妻」とわかっている。火元を隠して火消しはできない。国家を私物化し、職員を死に追いやっても素知らぬ顔の安倍政権をこれ以上、存続させてはならない。

支離滅裂の処分理由 「遺書」にあわてた政権

 佐川国税庁長官は辞任したのではない。捨てられたのだ。

 理財局長当時の国会答弁は虚偽だった。「記録は破棄」「事前の価格交渉はない」。森友関係者との口裏合わせを記録した音声データが暴かれても、安倍は野党からの追及を一身に受け止めた佐川をほめこそすれ、切ることはなかった。文書改ざんが報道された3月2日以後も、全く動じる素振りは見せなかった。

 ところが、確定申告真っ最中の3月9日、国税庁長官の職を突然「辞任、辞職」させた。その日、近畿財務局の担当職員Aさんが2日前に自死していたことが報道されたからだ。「遺書」には文書改ざんを命じた上司の名前が書かれているとも言われた。官邸には報道以上の情報がもたらされているはずだ。もはや、誰も責任を取らずに済ますわけにはいかなくなった。

 政権のあわてぶりは麻生太郎財務相の支離滅裂な説明に表れている。「佐川辞任」を公表した麻生は、「本人の申し出。極めて残念」といいながら、「国有財産行政の信頼を損なった」との本人の辞任理由に基づき減給20%3か月の懲戒処分を付け加えた。今になって「佐川の答弁に矛盾しないように、理財局の一部職員がやった」と文書改ざんの責任を押しつけているが、文書改ざんの事実を知ったのは11日と言い張る麻生。懲罰理由を示すことなく佐川に懲戒処分を加えた麻生は二重三重の誤りを犯している。

 国会議員への提供文書を財務省理財局だけの判断で改ざんするなどありえない。なぜ佐川が虚偽の答弁をしたのかが問われなければならない。

首相答弁に整合させる/消された安倍関与

 何が改ざんされたのか。

 財務省によれば、改ざん文書は、近畿財務局が14年6月から16年6月にかけて森友学園への国有地貸し付けや売り払い方針を決定した決議書など14件(表1)にのぼる。



 その中に1件、理財局決裁のものがある。15年4月30日付け「普通財産の貸付に係る特例処理について」(別表文書番号5)。「貸付通達に特段の定めのない特例的な処理となる」売り払いを前提とした定期借地契約を結ぶために、近畿財務局が2月4日付けで理財局長の承認を求めた申請(文書4)に回答した文書だ。

 近畿財務局が作成した資料はそのまま理財局の決裁文書に転用され、「『学校法人森友学園』の概要等」が新たに作成された(8面参照)。籠池泰典の名刺も付いている。その時の理財局長は佐川の前々任者であったが、文書はそのまま残された。

 それが17年2月、森友問題が国会で取り上げられ、安倍首相が「関与していたら総理も議員もやめる」と答弁した2月17日直後から、佐川局長は「記録はない」との答弁に終始。その裏で文書の点検を始め、安倍夫妻の名や森友優遇を示す表現を洗い出した。

 改ざんされたのは、起案理由を記した調書や森友学園との対応経緯であった。特に、「これまでの経緯」はごっそり削除。「H27(15年)1・8産経新聞のインターネット記事…安倍首相夫人が森友学園に訪問した際に、学園の教育方針に感涙した旨が記載されている」などの情報が消されている。近畿財務局も、理財局からの指示で、類似の記載がある文書の点検、改ざんに至ったのだ。

改ざん文書の昭恵効果 森友優遇への転機

 安倍夫妻の効果はどう表れているのか。15年5月「普通財産決議書(貸付)」(文書番号2)までの8件の文書(貸付期)から16年2月以降の6件のもの(売払期)へと、森友への肩入れ程度が一層深まっているところだ。

 貸付期には「特例」扱いしながらも、「契約破棄も行政府の裁量の範囲」とする検討も行うなど場合によっては手を切ることもあるとの慎重さがうかがえる文書が残っている。だが、売払期では「学園の提案に応じなかった場合、損害賠償に発展すると共に小学校建設の中止によるさらなる問題発生の可能性」(文書13)を心配して、ゴーサイン。そして、森友側の言い値になるまでゴミをつくり出し、異常な大幅値引きを行った。

 ちょうどこの貸付期から売払期の間となる15年9月、首相夫人が森友学園で講演し、名誉校長となった。その2か月後には、夫人付秘書官谷査恵子が財務省に照会する。一方で首相の安倍は7月、理財局長に同郷の迫田英典をつかせ、頻繁に打ち合わせをしている。戦争法強行の裏でもう一つの悪事が進んでいたのだ。

 佐川は「担当職員は病気療養中」と答弁したことがある。これは本当だった。森友側との交渉役であった近畿財務局池田靖国有財産統括官(当時)の部下であったAさん。改ざん文書の原本作成者と思われる。17年8月頃から休職していた。Aさんは、事細かに経過を記載し、理財局へ送った。問題情報は書かないのが「官僚の心得」だと言われる。だが、特例の根拠を残す必要ありと判断したのだろう。それを消せと命じられた。改ざんは17年2月下旬から4月にかけて。休職前、毎月100時間を超える残業が続いたAさん。「常識が壊された」と身内に伝え、亡くなった。

 国家を私物化し、職員を死に追いやる安倍政権の罪はあまりに重い。「ハッキリ申し上げて、全部、出発点は安倍さんだと思っている」(村上誠一郎元行革相)と自民党内部からも公然と批判の声が上がる。内閣支持率は、3月17〜18日の朝日新聞世論調査で第2次政権補足後最低の31%(13ポイント減)、不支持率48%(11ポイント増)と逆転など、各世論調査で一斉に急落した。佐川はもとより迫田、昭恵らの証人喚問抜きに真相の究明はない。
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