2018年03月28日 1520号

【みるよむ(477) 2018年3月17日配信 イラク平和テレビ局in Japan イラクで広がる小学校での体罰】

 イラクの小学校で体罰事件が広がっている。大けがをする生徒が出ているにもかかわらず、教育省は体罰をなくすための対策をとっていない。2018年1月、サナテレビはこの問題についてバグダッドの市民にインタビューを行った。

 インタビューに答える市民はみな怒り、強く批判する。ある市民は、教員が自分の鬱憤(うっぷん)晴らしのように生徒を殴る実態に憤る。

 「目が腫れ上がったり、腕や足の骨が折られる」実態すらある。これはもう暴力・傷害であり、犯罪行為だ。市民は「教員は、もっと大きな思いやりと、もっと大きな優しさを持つべきだ」と指摘する。

体罰放置する教育省

 ところが、教育省は体罰をやめさせるための措置を何も行っていない。「学校内の体罰問題に、生徒の両親と教員の両親が登場する事態になり、部族同士の争いになって大混乱まで起きている」という。

 さらに、教育界全体に腐敗や利権対立の問題があり、公立学校の教員が金を取って個人授業を行うこともまかり通っている。

 イラクでは、基幹産業である石油労働者の月収が1000ドル程度で、教員は最低生活費に達するかどうかの500ドル程度に過ぎないという。こうした低賃金では、個人授業のアルバイトをせざるをえない教員が出てくるのは当然だ。「お金があれば生きのびられますが、お金がなければ滅ぼされてしまう」という市民の声は教育現場の厳しい現実を伝えている。

1クラス生徒100人も

 体罰をはじめとした教育現場の問題は、個人の責任だけで解決できるものではない。「1つの建物の中に3つの学校が入っている」「1クラスに80人から100人の生徒がいる」という劣悪な教育条件がバグダッドでもまかり通っている。

 イラク政府は、私立の学校を増やす一方で、公立学校の設備改善や教員の賃金・労働条件の向上に取り組まず、公教育を破壊してきた。これが、イラクの学校で体罰が広がっている根本にある。

 サナテレビは、公教育を取り戻すために声を上げようと呼びかけている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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