2018年03月28日 1520号

【沖縄辺野古 民意顧みない国策追認判決 「問われるべきは政府だ」 不当判決はねかえし新基地阻止】

 沖縄の民意を顧みず、必要な法的手続きも行わない。そうした安倍政権のなりふり構わぬ新基地建設強行姿勢が生んだ2つの裁判。那覇地方裁判所は、3月13、14日と連日不当判決を言い渡した。

実質審理せず門前払い

 名護市辺野古の新基地建設を巡り、無許可の岩礁破砕は違法として県が国を相手に岩礁破砕差し止めを求めた訴訟の判決で13日、那覇地裁の森鍵一(もりかぎはじめ)裁判長は「訴えは裁判の対象にならない」として県側の訴えを却下した。国と県の間で起きている漁業法を巡る解釈の争いについて、司法判断をしないままの門前払いだ。県が求めていた工事の差し止めの仮処分申し立ても同時に却下した。

 漁業法についての長年にわたる見解を政府が勝手に変更し、そのもとで岩礁破砕許可を不要とした沖縄防衛局の手続きの適否について、那覇地裁は審理さえしなかった。判決後、記者会見した県側弁護団の宮國英男弁護士は「何も判断していない。裁判所が判断できないなら、どこで判断してもらえばいいのか」と憤る。また、今回引用された、行政は自らの権限保護のためには裁判所を利用できないとする最高裁判例も、行政法学者から厳しく批判されるものだ。民意と県側の主張に真摯(しんし)に向き合うことなく一蹴する姿勢は不誠実極まりなく、司法の役割を放棄したに等しい。

 判決を受け、小野寺五典防衛相は「辺野古を進める後押しになる」と明言し、新基地建設推進の根拠にしようとする。しかし、この裁判は辺野古新基地建設の是非を判断するものではなく、工事が認められたのではない。

 県の謝花喜一郎知事公室長は、岩礁破砕許可を得ずに工事を進めることが違法かどうかの判断は下されていないことを指摘。「負けは負けでも無傷の負け」「県の権限行使について否定されたわけではない」と引き続き国と争う構えを見せる。翁長雄志(おながたけし)知事も「判決は納得できない」として控訴する方針だ。

無罪勝ち取るまで闘う

 翌14日昼。那覇地裁前の城岳(じょうがく)公園には、前日の辺野古差し止め却下の悔しさを吹き飛ばす熱気にあふれた。

 辺野古新基地や東村(ひがしそん)高江の米軍北部訓練場ヘリパッド建設に対する抗議活動を巡り、威力業務妨害や公務執行妨害・傷害などの罪に問われた沖縄平和運動センター山城博治議長ら3人の判決があるこの日、裁判に先立つ事前集会には県内外から約300人の支援者が山城さんたちを激励。集会には、東京MXテレビ「ニュース女子」で高江の抗議活動と自身へのヘイト攻撃により人権侵害を受けた「のりこえねっと」共同代表の辛淑玉(シンスゴ)さんらも応援にかけつけた。

 柴田寿宏裁判長は、山城博治さんに懲役2年、執行猶予3年、キャンプ・シュワブゲート前のブロック積みで威力業務妨害に問われた稲葉博さんに懲役8か月、執行猶予2年、ヘリパッド建設の抗議活動を巡り起訴された添田充啓さんに懲役1年6か月、執行猶予5年(一部無罪)の不当判決を言い渡した。

 判決理由で、柴田裁判長はブロック積みの行為について「表現活動の面を有する」と正当性を認めながらも、「憲法の表現の自由の保障範囲を超えている」と根拠もなく弾圧を追認した。また、山城議長の行為について「反対運動のリーダー的存在として共犯者らの犯行を煽った」「悪質」「正当化できない」と口をきわめて罵り、裁判で問われた米軍基地が押し付けられてきた沖縄の苦難の歴史や、全国の機動隊を大動員した異常・違法な弾圧についてもいっさい意に介さなかった。

 山城議長は「抗議活動の背景も見ず、行為のみに着眼して論じた。形式的な不当判決だ」と批判し、判決を不服として即日控訴。「問われるべきは政府だ」と、今後も無罪を勝ち取るまで闘う決意を示した。同日夜、那覇市で開かれた判決報告集会では多くの市民が糾弾の声を上げた。

 立て続けに不当な国策追認判決が出された2つの裁判。共通するのは、裁判所が安倍政権による憲法も法も踏みにじった工事強行という事態の本質に向き合わず、民意をまったく受け止めなかったことだ。国の進めることは正しく、県や反対運動の側が悪いと印象操作さえ行う。政府の意に忠実に従った判決内容は、司法の役割を自ら投げ捨てたものだ。運動と世論の力でたださなければならない。

絶対に諦めない

 「判決に一喜一憂しないで、絶対に諦めない」と報告集会参加者は語る。司法判断に失望しつつも、決して諦めが広がることはない。シュワブゲート前では、300台を超える車両が入る日もある中、「私たちに諦めているひまはない」。気持ちを新たに闘いの継続を誓い、さらなる結集を呼びかけた。   (A)



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