2018年03月28日 1520号

【非国民がやってきた!(278)土人の時代(29)】

 琉球人の遺骨問題が浮上して、琉球民族遺骨返還研究会(代表・松島泰勝龍谷大学教授)及び琉球新報は精力的に調査し、京都大学に質問し、調査を求めてきました。ところが、京都大学は質問にまともに応答しません。それどころか松島泰勝代表に対して、質問のために訪問することを拒否する通告までしました。

 京都新聞もこのテーマに関心を持って、次々と記事を書くようになりました。沖縄本島の百按司(むむじゃな)墓だけでなく、奄美諸島からも多数の遺骨が持ち出されたため、徳之島、喜界島、奄美大島でも遺骨問題をめぐる調査と議論が始まり、返還を求めて動き始めようとしています。

 京都大学の対応はとうてい許されるものではありません。社会常識に欠ける対応であり、論外と言わなければなりません。

 第1に、かつて北海道大学がアイヌ民族からの質問・面談要請に対して、同様に門前払いの対応をしました。しかし、社会的批判を浴びたうえ、北海道大学は調査を余儀なくされました。アイヌ民族が裁判所に提訴することになりました。その結果、一部は和解が成立して遺骨返還に至りました。京都大学も同じ道をたどるしかないでしょう。実際、アイヌ民族の遺骨については京都大学も調査結果を発表しています。

 第2に、事柄は先住民族の権利に関わります。日本政府はアイヌ民族だけを先住民族と認め、琉球民族の先住性を認めていません。京都大学も同じ判断なのでしょうか。それならば、琉球民族の先住性についての判断を明確にすべきです。国連人権機関においては琉球民族の先住性が指摘されています。

 第3に、学問の責任が問われています。大日本帝国時代に、帝国大学がいかに「学問の自由」を口実に人権侵害と民族差別を行ってきたか。そのことへの責任観念を京都大学は有しているのでしょうか。

 第4に、文科省はこれまで何をしてきたのでしょうか。アイヌ民族からの提起があって、諸大学にアイヌ民族の遺骨の実態調査を行いながら、アイヌ民族についても琉球民族についても遺骨問題を解決するための指導を行ってこなかったことは文科省の責任です。

 2017年8月29日、照屋寛徳・衆議院議員が、国政調査権に基づき、文科省より京都大学への照会を請求しました。次の7項目です。

1.琉球人遺骨が京大(旧京都帝大)に保管されるようになった経緯及び手続についてご教示ください。

2.琉球人遺骨の保管は、現在どのように行われていますか。(1)安置場所(施設名および室名)(2)保管の仕方(納骨している入れ物の材質や形状等について)、(3)保存状況について明らかにしてください。

3.これまでに琉球人遺骨を用いて京都大学の教員・大学院生・学生らにより行われた研究(論文のリスト等)としてどのようなものがありますか、ご提示ください。

4.琉球人遺骨の「人骨目録」は作成されていますか。作成しているのであれば、現物の写し等を明らかにしてください(ちなみに、アイヌの「人骨目録」は作成されていたことが判明しております)

5.『アイヌ人骨保管状況等調査ワーキング報告書』(京都大学、2012年)にならい、琉球人遺骨についてもワーキングチームを立ち上げ調査する考えはありますか。

6.琉球民族遺骨返還研究会(代表・松島泰勝龍谷大教授)の問い合わせやマスコミ(琉球新報、沖縄タイムス、東京新聞など)の取材を拒否しているそうですが事実でしょうか。その理由と併せて伺います。

7.文科省として、琉球人遺骨が京都大学総合博物館に所蔵されている事実を把握していたか。本件照会請求を受けて京都大学に照会する意思がなければ、その理由及び照会を拒否する法的根拠を明らかにしてください。

 以上が照屋議員の質問です。

 この間、すでに紹介したように、文科省は「大学等におけるアイヌの人々の遺骨の保管状況の再調査結果」(2017年4月)を公表しました。北海道大学をはじめとする諸大学が保管する遺骨の状況に限定した調査であり、責任問題や返還問題には触れていませんが、今後の議論の手がかりにはなります。同様の調査を琉球民族の遺骨についても行うべきです。
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