2018年03月28日 1520号

【原発賠償訴訟 京都 東京で判決/国に責任 避難の権利認める/京都 57世帯174人/「避難は社会通念上、相当」/解決への大きな一歩】

 福島第一原発事故により京都に避難した57世帯174人が東京電力と国に損害賠償を求めた裁判で、京都地裁(浅見宣義裁判長)は3月15日、東電・国の責任を認定、原告の大多数を占める「自主」(区域外)避難者への賠償では新たな基準を示して相当性(合理性)を認めた。宮城県仙台市・茨城県つくば市からの3世帯を除く52世帯、一部認容を含め原告149人の避難を相当として、110人に総額約1億1千万円の支払いを命じた。

 判決は、国の津波予見可能性を指摘し、国が東電に対応を命じなかったのは違法、「遅くとも2006年末に規制権限を行使すれば、事故は回避できた可能性が高い」と責任を認めた。一連の集団訴訟で3度目だ。区域外避難は、「避難指示に基づく避難でなくとも、個々人の状況によっては各自が避難を決断するのも社会通念上、相当」と述べ、7点の個別事情要素を考慮して認定。初めて避難の基準にかかわる判断を示した。

 しかし、対象者を2012年4月までに避難した者に限定、損害賠償の認容期間を2年間とし額を極めて低く抑えたことは、原告らが納得できるものではない。

一部棄却に控訴

 この日、地裁には傍聴希望の370人以上が長蛇の列。支援の広さを物語る。午前10時過ぎ、判決言い渡しを受け、弁護団が三度国の責任認める∞一部勝訴≠ニ旗出し。

 報告集会では、最大の注目点だった区域外避難の相当性(=避難の権利)が判決で示された報告を受け、原告らには達成感が広がる。一人ひとりの発言では、棄却があった悔しさや避難の苦しい思いとともに、共通して「避難が正しかったことが認められた」「原告・弁護団・支援者が一つになって闘った成果」と語られ、大きな拍手がわく。

 福島敦子原告団共同代表は「国は責任を免れないことが確固たるものになった。解決への大きな一歩」と意義を強調し、萩原ゆきみ共同代表も「避難の正当性をわかってもらえる判決。みんなで頑張ってきたことが表れている」。

 田辺保雄弁護団事務局長は「国が加害者であると認め、避難者に寄り添うべきとの主張に沿った判断だ」と評価しつつ、「棄却が出た以上、一部勝訴だ」。原告代表、弁護団は控訴の意志を表明した。

 駆け付けた生業(なりわい)、群馬、千葉、東京、かながわなど各訴訟代表や支援者らも連帯アピール。支援する会の奥森祥陽事務局長は「全面解決に向け、3月27日に院内集会。国・東電との交渉も行う。4月29日報告集会、控訴審への一層の支援を」と呼びかけた。



東京 17世帯47人/「居住地決定権を侵害」/今までの苦労がこの金額か

 3月16日は東京地裁で、避難区域外から都内に避難した47人が国と東電を訴えた訴訟の判決。福島県内の区域外避難者の避難の合理性を認め、5人を除く原告に42万〜406万余円の賠償を支払うよう国と東電に命じた。「想定外の津波による事故」との被告側主張を退け、国の地震調査研究推進本部の2002年長期評価に基づく津波の予見義務・対策義務、規制権限行使義務を怠った結果と断罪した。

 避難と事故との因果関係では、「低線量被ばくでもがん死リスクが増大すると考えるLNT(閾値<しきいち>なし直線)モデルは科学的に有力な見解」と認定し、「自らの生活の本拠を自由な意思で決定する権利=居住地決定権」の侵害に踏み込んで判断した。しかし、「義務違反は慰謝料を加算する程度のものとは認められない」とし、額は低く抑えた。

 判決後の報告集会には、200人が参加。森川清弁護士は損害賠償にふれて「少なくとも中間指針の額は超えた」と評価する一方、「(算定対象)期間が2011年12月で切られたのは課題だ」と指摘した。判決が示した避難継続のタイムリミットは、原則として11年12月まで、子どもや妊婦がいる場合でも12年8月まで(同月「旧緊急時避難準備区域」の慰謝料が打ち切られた)でしかない。

 原告の発言では「避難は間違っていなかった、とうれしく思う」との確信とともに、「今までの苦労がこの金額では、とても納得できない」「すごく少額で、もっときちんとした形を認めてもらいたい」など批判が出された。
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