2018年04月13日 1522号

【佐川喚問が狙う「幕引き」構図/「総理の意向」に尽力する官僚機構/逃げ切り許すな、民主主義取り戻せ】

 森友文書改ざん事件発覚後3週間以上経って、やっと実現した佐川宣寿(のぶひさ)前理財局長の証人喚問。ところが佐川は「安倍夫妻の関与はない」と断言する一方で、改ざんの真相については答弁拒否を連発。闇は深まるばかりだ。際立ったのは、理財局にすべてを押しつける幕引き構図。「総理のご意向」実現に奔走する高級官僚が安倍政権を取り巻いている。保身に走り「安倍私兵」になり下がった腐敗官僚もろとも、安倍内閣を総辞職に追い込もう。

台本どおりの佐川証言 真相は闇に沈める

 「文書改ざんは理財局内で行なった」「記録がないとの国会答弁は丁寧さを欠いた」「売買は適正に行った」。これが佐川証言のすべて。「首相官邸・政治家からの不当な圧力はなかった」―こう言い切るのが佐川の役割だった。

 最初の質問者自民党丸川珠代参院議員との掛け合いはあまりにもわかりやすい。「安倍総理からの指示はありませんでしたね」と丸川が念を押し「ございませんでした」と佐川が答える。衆参両院で計4時間余りしかない質問時間の半分近くをこんな与党の茶番劇に費やしたのだ。

 二階俊博自民党幹事長は「首相はじめ政治家の関わりはなかった。疑いは晴れた」と語り、菅義偉(すがよしひで)官房長官は「(改ざんを)首相も私も全く承知していない。何もしていなかったから(指示は)なかったということだ」と幕引き宣言をしている。

 佐川証言は「ルール通りであれば」との虚構の上に組み立てられている。「個別案件なので理財局判断」のはず。「価格は鑑定評価により適正」のはず。唯一謝罪した「記録がない」もルール上そのはず。調査しなかったことが「丁寧さを欠いた」。そのルールが破られたことにはしらを切る。

 なぜ改ざんが必要だったのか、いつ、だれが指示をしたのか、の問いには「刑事訴追の恐れがある」と証言を拒否した。文書改ざんで消されたのは、森友学園に国有地をタダ同然で売払った経緯。消さなければならなかった理由こそが、森友疑獄の中心環だ。

台本から配役まで 監督今井の安倍擁護劇

 佐川証言の台本を作ったのはだれか。森友援護の仕掛け人、「安倍の意向」を最もよく理解している者だ。「影の総理」と言われる今井尚哉(たかや)首相秘書官に間違いないだろう。自由党森ゆうこ議員に「森友問題で今井秘書官と話したことはないか」と聞かれた佐川は「官邸とは課長クラスが調整」とルール説明ではぐらかす。2度3度と問われ、やっと「ございません」と否定した。すぐには否定できない関係があったのだ。

 佐川と今井は82年、当時の大蔵省と通産省に入った同期生で、「非常に親しい関係」(「週刊文春」3月29日号)だったという。官僚の世界を知る前川喜平前文部科学事務次官も「官邸にいる誰かから『やれ』と言われた」と推測。「今井氏ではないかとにらんでいる」(「週刊朝日」3月30日号)。

 森友学園籠池泰典前理事長が「神風が吹いた」と言う15年9月。貸し付けや売り払い額をめぐり渋っていた国が一転、協力的になった時期だ。財務省へ照会をした首相夫人付谷査恵子秘書官は経産省出身、今井の部下に当たる。

 安倍昭恵が名誉校長に就任した同年9月5日の前日、安倍は国会をさぼりテレビ番組出演のため大阪に行った。今井も一緒だ。安倍はその日のうちに戻ったが、今井はとどまった。近畿財務局と接触した疑念がもたれている。3月26日の参院予算委員会で民進党増子輝彦議員がこの点を質した。安倍は「質問通告を受けていないから。調べればわかることだが」と今井の行動をごまかそうとしつつ、「今井秘書官が近畿財務局の人と会ったということはない」と明言する。隠すにしてもお粗末だ。

 そして、佐川の補佐人についた熊田彰英弁護士は、小渕優子元経産相の政治資金規正法違反事件、甘利明元経済再生相のあっせん利得処罰法違反事件の弁護人でもある。経産省出身今井の領域だ。台本から配役まで安倍案件を取り仕切るのが首相首席秘書官。まさにはまり役ではないか。

腐敗政治横行させる腐敗官僚たち

 安倍の人事配置は狡猾だ。15年7月財務省内ルールを覆し、首相秘書官経験のある田中一穂を事務次官に就けた。望外の職を得た田中は「安倍案件」の発掘と成就(じょうじゅ)へ献身したという。同時期、理財局長には山口県出身の迫田英典が、近畿財務局長には武内良樹が就いた。森友学園が資金難で開校を1年延期せざるを得なくなる時期だ。このラインで8億円値引きのストーリーを作り、国土交通省航空局、大阪航空局がゴミ捏造(ねつぞう)を実行した。

 安倍政権は官僚人事を一手に握る内閣人事局を14年5月に発足させている。その局長には「働き方改革」でデータ捏造をはかった加藤勝信(現厚労相)、加計(かけ)学園問題で「総理の意向」と文科省を脅した萩生田光一(元文科相政務官)、前川前事務次官の「出会い系バー」調査を指示した杉田和博(元内閣情報官)が順に座った。安倍腐敗政権を支える面々はこうした連中に見出され、適材適所≠ノ配置されていたのだ。



 下手な芝居でも「取り引きは適正」と言い切れる佐川は、天下りをあきらめてもそれに見合う人生が約束されているのだろう。一方、「ゴミ撤去費を算定したこと(知見・経験)はない」と正直に答弁した国土交通省前航空局長佐藤善信は、次のポストには就けず、退任に追い込まれた。「官邸による露骨な賞罰人事」(3/28毎日)と誰もが見る。

 安倍政権による国家の私物化は、行政府を腐敗政治の実行部隊へと堕落させている。教育勅語を賛美する愛国小学校設立へ「総理の意向」どおりに動いた今井首相秘書官、田中元財務事務次官、迫田元理財局長など証人喚問すべき官僚はまだまだいる。

 安倍腐敗政権の存続は、日本の民主主義に取り返しのつかないダメージを与える。一刻も早く総辞職に追い込もう。

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