2018年04月13日 1522号

【みるよむ(479)2018年3月31日配信 イラク平和テレビ局in Japan イラク市民の食料配給カードを奪ったのは誰だ】

 イラクでは、日常生活に最低限必要な食物を供給していた食糧配給カード制度が全く機能しなくなり、貧困層の生活は一層圧迫されている。2018年2月、サナテレビはこの問題を追って市民にインタビューを試みた。過去にも、何回か取り上げてきた問題だ。

 かつて独裁者サダム・フセインのバース党政権は、政府批判は厳しく弾圧したが、食糧配給カード制度で小麦や紅茶、砂糖などは最低限の暮らしができる程度に国民に配給していた。ところが2003年のイラク占領以来、品目が減らされ、食用に耐えられない粗悪品が配給されることもあった。

 占領から15年が経った今、食糧配給制度は実質的に崩壊している。政府は食糧配給の予算を組んでいると説明するが、なぜこんなことが起こるのだろうか。

 市民活動家は「1年前にトルコから輸入した食用油の配給カードが配布された。だが、配給期限が切れたにもかかわらず、その食用油は港に積み残されていた」という事実を暴露する。米の配給カードも同様に配られただけで期限切れになってしまった。行政機関は、市民の食料を腐らせ、放置している。活動家は「主権者のイラク市民を侮辱し、あざ笑っている」と憤る。

 ある公務員は「食糧配給カードを利用して汚職が行われていることをみんな知っている」と説明する。市場に行けば粗悪な食料品の配給カードが売られていると言う。

背景に予算横領の構造

 もう一人の公務員がその背景を語る。「例えば汚職役人は、10`を輸入して20d分の費用を受け取る」。これでは、10万円分の配給のために国家予算から2億万円近くの横領を許す計算になる。「資金は市民の手に届くのではなく、人びとをペテンにかける政府職員の手に渡る。汚職役人は利権のうまみがなくなったら、もっとうまみのある別の部署に移っていく」という腐敗構造なのだ。

 現在、イラク人口の60%以上が貧困ライン以下の生活を送っている。サナテレビは、政府職員の汚職が食糧配給カード制度を破壊し、市民の生活をさらに追い詰めている実態を明らかにする。こうした不当な支配を許さず、社会を変えようと呼びかけている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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