2018年04月13日 1522号

【それでも安倍は懲りてない/放送法改悪策動とデモ封じ条例/醜い悪あがきが民主主義を壊す】

 森友文書の改ざんがバレて以来、すっかり落ち目の安倍政権。頼みの内閣支持率は急降下、自民党内からも「続投は無理」との声が出始めた。だが、安倍晋三首相は「自らの手で改憲実現」をあきらめたわけではない。メディア支配を強化し、反対運動を封じ込めば「まだまだいける」と思っている。連中は何を企んでいるのか。

放送法4条を撤廃

 安倍政権が「放送事業の大胆な見直し」を検討している。その柱は、放送番組について「政治的公平性」「報道は事実を曲げない」「多角的に論点を明らかにする」などを定めた放送法4条の撤廃だ。「規制を緩和し自由な放送を可能にすることで、新規参入や競争を促す」のだという。

 もちろん、これは表向きの理由にすぎない。本当の狙いは『ニュース女子』や『真相深入り!虎ノ門ニュース』(DHCテレビ制作)のような極右ネット番組の地上波進出を手助けすることにある。その妨げとなる法規制をなくそうとしているのだ。

 そもそも放送法は、「大本営発表」がまかり通った戦時中の教訓に学び、政治権力から放送を独立させるための法律である。ところが近年、政府自民党は法の趣旨を捻じ曲げ、放送局を締め上げる道具として使ってきた。気に入らない番組に対し「政治的に公平性を欠く。放送法4条違反だ」と圧力をかける手口が横行していた。

 それがなぜ方針を変えたのか。安倍応援団が総出演し、露骨な政権擁護をくり広げるネットテレビのような番組を地上波でガンガン流した方が、世論対策上効果があると判断したのだろう。

 放送の公平原則(フェアネス・ドクトリン)を廃止した米国では、党派色を鮮明に打ち出した極右ニュース番組が出現した。イラク戦争推進やトランプ政権の誕生に貢献したFOXニュースが代表格だ。その日本版を安倍政権は欲しているのである。

 実際、自民党はかつてCS放送に党専門チャンネルを開設するために、放送法4条の撤廃を検討していたことがある。今回の政府案はこの構想を現代版にアレンジして復活させたものといえる。

改憲礼賛テレビへ

 地上波に進出したネット番組といえば、沖縄の反基地運動に対するヘイトデマを流した『ニュース女子』が大きな問題になった。BPO(放送倫理・番組向上機構)は「重大な放送倫理違反」や「人権侵害」があったと認定。番組を放送した東京MXテレビに再発防止の「勧告」を出した。

 4条が撤廃されてしまえば、こうした自浄作用も働かなくなる。「報道は事実を曲げない」という規定を気にしなくてもよいのだから、『ニュース女子』的な番組が地上波でも増え、政権擁護のフェイクニュースを流しまくることは目に見えている。

 ちなみに、今回の放送制度改革案を取りまとめようとしている「規制改革推進会議」のメンバーには『ニュース女子』の出演者が3人もいる(司会の長谷川幸洋・東京新聞論説委員など)。アベ友を使ったお手盛り審議会がここでも、というわけだ。

 総アベちゃんねる化を推し進め、改憲賛成の世論誘導を強力に推進する――安倍首相の狙いはここにある。

国会デモ一掃を狙う

 次は、安倍政権をアシストする小池都政の暴挙である。3月29日、東京都の改正迷惑防止条例が都議会本会議で共産党などを除く賛成多数で可決、成立した(施行は7月1日)。「抗議の自由」を封じ込めることを目的とした悪法との批判が広がっている。

 ポイントは「つきまとい」規制の強化だ。ストーカー規制法は「恋愛感情」でのつきまといが対象だが、新条例の要件は「特定の者に対するねたみ、恨みその他の悪意の感情を充足する目的」ときわめてあいまいだ。さらに「つきまとい」の定義を広げ、「みだりにうろつくこと」「名誉を害する事項を告げること」も新たに禁止した。

 宇都宮健児弁護士は拡大解釈の危険性を指摘する。「悪意の感情などは内面の問題なのに、警察の恣意的判断に委ねられてしまうことは問題だ。森友・加計問題で安倍首相らを非難することも『悪意の感情を充足する目的』とされかねない。警察の判断で国会デモに参加する人たちをいつでも逮捕できる余地を与えてしまうことになる」(3/22抗議集会での発言)

 事実、刑法上は名誉棄損にあたらない行為がこの条例では取り締まりの対象になる。国会前や街頭で政治家批判のコールをしたり、労働組合が企業の不正を告発するチラシをまいたりする行為が、捜査当局の勝手な判断で逮捕・起訴できてしまうのだ。まさにデモ封じ条例ではないか。

 新条例の提案者は警視庁である。首相官邸前や国会デモを一掃したい安倍政権の意向を受け、中央直結の警察組織が動いたことは明らかだ。

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 「悲願の憲法改正をやり遂げたい」と悪あがきを続ける安倍政権。連中の延命のために、この国の民主主義が壊されるようなことがあってはならない。      (M)



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