2018年04月20日 1523号

【みるよむ(480) 2018年4月7日配信 イラク平和テレビ局in Japan 下水があふれるバグダッドの町並み】

 イラクの首都バグダッドでは、雨が降ると至るところで下水があふれ出す。2018年2月、サナテレビは深刻なこの問題について人びとの訴えを聞いた。

 乾燥地帯のイラクで雨が降れば水があふれ出すなど、にわかには信じられないかも知れない。しかし、映像の冒頭で目にするのは、路上にあふれる水につかりながら進む自動車や、民家の床一面に広がった汚水だ。まるで台風が来て水害に見舞われたような光景だ。

 イラクでは雨が多い12月から3月ごろでも、月平均降水量は30_程度。その程度の雨量で町の中心部に水があふれるなど考えられない。

 市民は「こんな事態を招いた原因は、下水処理場が老朽化してまともに動いていないこと、住民が下水にゴミなどを捨て下水管を詰まらせることだ」と説明する。

 あるメディア関係者は、下水道システムなどの整備に「2003年のイラク占領以来、バグダッド市行政当局は多額の予算をつぎ込んだ。にもかかわらず、それが全く役に立っていない」と憤る。このジャーナリスト自身、あふれる下水によって家に閉じ込められて仕事に出ることができず、「今日、出てこられたのは奇跡だ」と語るほどだ。イラク戦争・占領から15年。何十億、何百億ドルもの資金がつぎ込まれているはずなのに、それは役人の汚職で消えていく。「バグダッドに赴任する役人が真っ先に関心を持つのは、盗んだ資金をどうやって山分けするかだ」と痛烈に批判する。

放置される老朽化

 カメラは家に入り、浸水した現場を映し出す。その家に住む女性の話はこうだ。「下水を取り除くために近くのゴミを撤去しなければならなくなった。バグダッド市当局に電話をしたら『一緒にやりましょう』と返事が来た。しかし、朝8時から待っていたのに、ついに当局者は誰も来なかった」。当局が市民をどのように扱っているかを端的に物語っている。

 バグダッドでは下水があふれかえっている。下水処理システムが老朽化し、まともに機能していない。政治家や役人によって国家財政が盗み取られているのだ。サナテレビはこうした現実を暴き、政府と社会を変えようと呼びかけている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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