2018年05月04日・11日 1525号

【沖縄 普天間二小避難216回の異常/辺野古7月土砂投入阻止へ全国から】

返還合意から/22年間の危険

 米軍普天間飛行場の返還合意から4月12日で22年を迎えた。昨年12月、米軍大型ヘリの窓落下事故があった宜野湾(ぎのわん)市普天間第二小学校では、米軍機接近による児童の避難が、運動場使用再開の2月13日から3学期末3月23日までの39日間に合計216回に上ったことが明らかになった。

 最も多い日で1日に23回。1コマの授業中に「避難が2回あれば授業にならない」という事態だ。事故後、「最大限可能な限り避ける」とした米軍の約束は簡単にほごにされ、保護者らは「教育を受ける権利がないがしろにされている」と憤る。米軍機が飛ぶたびに子どもが避難を強いられる異常な状況など全国のどこにあるだろうか。これが返還合意から22年の実態だ。

 国が沖縄県に約束した「普天間飛行場の5年以内の運用停止」が期限まで約10か月と迫っている。この約束は2013年、仲井眞県政時に交わされ、辺野古新基地工事とは切り離すものとされていた。しかし、政府は新基地建設に反対する翁長雄志(おながたけし)知事に対して態度を一変し、辺野古移設に協力しないことを口実に「運用停止は困難」と県に責任転嫁する。「危険性の除去」を看板にしながら、危険性を放置しているのは政府の方だ。

 翁長知事は「(普天間問題が解決されない要因は)県内移設ありきで解決しようとする政府の姿勢にある」と批判。県議会も2月に普天間の即時運用停止を求める抗議決議を全会一致で可決している。

 宜野湾市では市民有志が、落下物事故を受け、「人口密集地の飛行をしないよう申し入れる」「事故の際全機飛行停止を求める」などを盛り込んだ「宜野湾市平和な空を守る条例」制定署名への取り組みを始めた。

「適用除外」?/日米二重基準

 名護市辺野古の新基地建設工事で沖縄防衛局は4月9日、新たな護岸「N3」の工事に着手した。すでに着工済みの「K4」と「N5」の両護岸をつなげ、7月にも土砂投入開始を狙う。また、防衛局は当初の工程を変更し、サンゴ移植について沖縄県の許可を得る必要がない場所から埋め立てを進めるなど、土砂投入に向け工事を加速させる。これに対し県は、埋め立て承認の「留意事項違反」として、防衛局に工事の実施設計と環境保全対策の事前協議を行うよう行政指導文書を出した。国は応じず、県は留意事項違反が積み重なれば埋め立て承認の「撤回」としたい構えだ。

 新たに浮上したのが、辺野古新基地周辺の建物の高さ制限問題だ。米国防総省の基準では、滑走路の周囲2286bに標高約55bを超える建物があってはならないが、辺野古の国立沖縄工業高等専門学校校舎はいずれも標高59〜70bと高さ制限を超えていた。防衛局は学校側に何の説明もなく「適用除外」としていた。設置基準に違反したまま工事を進めるのは、命を軽んじることに他ならない。米国で違反とされることが沖縄ではクリアされる。こんな二重基準は絶対に許されない。

  

埋立承認撤回へ/知事支える闘いを

 辺野古キャンプ・シュワブゲート前では、連日300台を超える工事車両の搬入が続き、工事の加速化を狙う。だが、座り込みの市民たちは「工事は見せかけ」「あきらめない」と強い思いだ。

 ゲート前では沖縄平和運動センター山城博治さんや稲嶺進前名護市長も訪れ、元気な姿を見せている。4月7日の県民大行動集会で稲嶺さんは「基地建設を止めるためにいろんな方法がある。勝つまで一緒に頑張ろう」と意気込みを語り、多くの市民とともに座り込みに参加した。

 新基地建設の海域では、地震を起こす活断層の存在やマヨネーズ状の柔らかさとも言われるほどの軟弱地盤が指摘されており、工事は簡単に進まない。搬入を止め工事を遅らせようと4月23日からの6日連続500人集中行動も展開された。初日には座り込み現場に約700人の結集があり、搬入を大幅に遅らせた。さらに継続、拡大が求められている。

 一方最近、新基地建設を止める手段の一つとして新基地の賛否を問う県民投票の動きが県出身学生や県企業家らでつくる「『辺野古』県民投票の会」から提起され、波紋を広げている。県民投票を巡っては、基地に反対する市民の中でも意見はさまざまだ。

 辺野古の運動をリードしてきた山城博治さんは「現場から人をはがして県民投票にいそしむ。そんなリスクを負う運動は違うと思う」と、阻止行動現地から力をそがれることに懸念を示した。翁長知事が「撤回」を目前にし11月知事選を控える中、知事を支える市民と運動が分裂するようなことがあってはならない。

 いま、多くの市民が現地に結集し座り込みをさらに強力にすることが、知事を支える上で不可欠だ。同時に、全国から安倍退陣を求める運動と世論を一気に広げていくことが、新基地建設をストップさせる大きな展望となる。(A)

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