2018年05月04日・11日 1525号

【市民が自治する自治体へ/教育、介護、地域づくりへ/東京・足立区からのレポート】

市民感覚でチェック

 議会は税金・お金の使い方を決めるところであり、市民感覚でチェックしていくことが重要だ。

 2006年政府は夕張市財政破綻に際し、勝手につぶれろ≠ニ見捨てた。しかし全国自治体における「基金」残高が過去最高21兆円(10年間で7兆9439億円増、2006年から1・6倍、東京都は3・6倍)となっていることをみて、地方交付税を削減する必要があると言及しだしている。

 基金とは、企業でいう内部留保、家庭でいう貯金だが、自治体における基金積み増し増は、住民サービス削減と負担増によって黒字を蓄えてきたからに他ならない。足立区が毎年最高額を更新してきた1518億円もの基金は、政府の自治介入を許さず、本来の使途である住民福祉へ振り向けさせなければならない。

 また、総務省は自治体戦略2040構想研究会を昨年立ち上げ、少子高齢化を口実に自治体サービスの縮小と自治体業務のアウトソーシング加速を打ち出している。政府からの圧力に対抗し、地方自治の観点から、地域に暮らす住民が自治体の予算に対し異議を申し立て、必要な福祉・社会サービス拡充を求めることが、新自由主義攻撃との足元からの闘いとして大切だ。

過去最高額の基金

 今年の足立区の予算は一般会計2768億円と史上最高額となった。私たちが福祉の充実を口にするたびに、オオカミが来るぞ=財政逼迫(ひっぱく)・都区財調(都区財政調整制度の交付金)が減る見込みだと、だからバラマキはできないと与党や区は言ってきたが、さすがに昨年決算頃からは危機あおりは減った。区の新年度予算は、都区財政調整交付金が固定資産税や法人住民税の増収により昨年比8億円増、区民税も増収傾向で10億円増を見込み、4年連続で過去最大の予算総額となった。

 にもかかわらず、足立区の行政サービス水準は23区の中でも低いものが多い。

 がん検診は無料化をおこなっている区もあるにもかかわらず、23区で唯一自己負担3割を強いる。知的障がい者への福祉手当も重い方から1〜4度までの区分すべてをカバーする区独自の上乗せ給付を行っている区が22あるが、足立区だけ3度までしか認めない。身体障害3級の手当も23区最低額だ。老齢による聞こえ(難聴)の問題が増える中、高齢化社会に対応した補聴器購入補助も江東5区(墨田・江東・足立・葛飾・江戸川)では足立区だけが行っていない。都下で少子化対策として不妊治療費助成の上乗せ助成に取り組む自治体が増えているが、足立区は「行わない」と言い切る。こうした必要な行政サービスを行わず、ため込んできた結果が「過去最高額の財政基金」なのだ。


足立区「平成30年度予算編成のあらまし」から
2004年度(平成16年度)から積立金が急増。ここ数年は過去最高額を更新している。必要な市民サービスを切り捨ててきた結果だ。

「貧困対策」の欺瞞

 足立区は区の特色として子どもの貧困対策を強調するがこれも欺瞞に満ちたものだ。予算をかけずに成果だけ出したい、そんな下心が透けて見える。「歯を磨こう、大人が子どもに声掛けを」というが、貧困の連鎖を断ち切るために本当に必要なのは教育の保障であり経済給付策だ。

 足立区の就学援助は、生活保護世帯を1とした指数1・1と23区平均1・2と比べて低く、全国平均1・3ともかけ離れた数字だ。それでも認定率は全児童・生徒の32%と国・都と比べ2倍ほどの子どもたちが制度を利用している実態で、手を差し伸べるべき困難世帯はもっと多い。1・2へは5億円、1・3だと11億円で制度の拡充が可能だ。

 給食費の無償化には15億円が必要という区の試算だが、民間委託をやめることで2億円弱の経費削減、議員報酬半減・政務活動費廃止で3億1千万円の削減、また不要・不急の道路工事先送りで5億円などをはじめ、市民・生活者目線で細かくチェックを行えば、様々な給付策を行える財源を確保できる。

 介護保険料も値上げされ、23区で一番高い額とされてしまったが、一般財源からの繰り入れで値上げを止めることができる。

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 ソウル市では市民の自治を位置づけ市民参与予算制度を採り入れている。予算総額21兆ウォン(約2兆1千億円)のうち520億ウォン(約52億円)を市民公募で事業を取り決める。「市民が権力を監視する受動性を脱皮して、政治を通して積極的な変化を主導すべき」というのがパク・ウォンスン市長の考えだ。

 教育、介護、地域づくりなど暮らしへのへ予算付けを行えと要求し、市民が自治する自治体へ変革を進めよう。

(東京都足立区議・土屋のりこ) 
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