2018年05月04日・11日 1525号

【住宅追い出し政策に風穴 区域外避難者が政府・福島県交渉】

 区域外避難者の住宅無償提供が打ち切られて1年。「自立・生活再建」とは裏腹に、生活の困窮化が進んでいる。借り上げ住宅の国家公務員宿舎では、2年限り(来年3月まで)の継続入居が認められたものの、家賃の値上げや来年限りの追い出し通告、理不尽な契約書にサインを迫る戸別訪問が、避難者の不安を増幅させている。

 4月19日、衆院議員会館で避難の協同センターと子ども・被災者支援議員連盟共催の緊急政府ヒアリングが行われた。避難者約20人、国会議員9人が出席し、財務省・復興庁・国土交通省・福島県の職員とやり取り。避難者の生活実態をぶつけ、継続入居の延長に関して「福島県から具体的な意向が示されれば丁寧に対応したい」(財務省)、契約書サインの強要に関して「契約にかかわる戸別訪問はいったん停止する」(福島県)との見解を引き出した。具体的な住宅施策に風穴を開ける交渉となった。

 避難当事者は訴える。「家賃値上げについて県は『国から指示が出たら3月下旬までに皆さんに知らせる』。4月2日、月9千円の値上げを知らされた。今のパートは賃上げ8円、時給958円。いきなりすごい金額を請求され、どう生活したらいいのか。民間住宅は探しても探しても、家賃を払えるような部屋は見つからない。そんな中で、出ていけ、ということか。それなら、都営(公的)住宅に入れてほしい。友人は度重なる県の催促でノイローゼに。民間賃貸住宅に移ったが、月11万円の家賃はきつく、毎日毎日悩んでいる」

 財務省は家賃値上げについて「県と使用者の問題。指示はしていない」。福島県は「国と協議して確定した数字(家賃)だ」。矛盾をつき、避難者にも国家公務員と同様の家賃を基準にしていることをただした。「県が家賃を一部補助するとか、避難者の負担軽減の工夫を」との提案は検討事項に。また、値上げを「事前に居住者との協議の場を持たず、一方的に決めてサインを求めるのは契約書違反にあたる」と批判した。

理不尽な規定の削除検討

 天災など損壊により第三者に被害を与えた場合、入居者が賠償責任を負うとした契約書第12条の理不尽な規定については「(故意でない限り)一定の修繕予算は確保している。福島県を通じて申し出てもらえば対応する」(財務省)「12条の削除は国と協議して対応したい」(福島県)と検討を約束した。

 司会を務めた立憲民主党の山崎誠衆院議員は、家賃値上げ撤回、12条の削除、戸別訪問の中止を求め、「来年以降の宿舎貸し付けについて財務省は福島県の意向を受けると言っている。県はなんとかリクエストしてほしい。復興庁には、一律に『来年3月には出なさい』ではなく1〜3年の余裕を持たせるなどもっと柔軟に、延長する方向で検討するよう強く要望する」とまとめた。

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