2018年05月04日・11日 1525号

【市民連合がシンポジウム 社会の底が抜けた 尊厳ある生の回復を】

 「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」は4月20日、都内でシンポジウム「あたりまえの社会を考える―貧困・格差の現場から」を開いた。

 山口二郎・法政大学教授が主催者あいさつ。「政治の底が抜けたが、社会の底も抜けている。尊厳ある生を回復するために、どんな世の中の仕組みをつくるのか。その構想の政策論議からも市民がイニシアチブをとっていきたい」

 本田由紀・東京大学教授をコーディネーターに、前川喜平・前文部科学事務次官、NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」の赤石千衣子理事長、作家の雨宮処凛(かりん)さん、栃木県の地方紙・下野(しもつけ)新聞の山崎一洋・真岡(もおか)総局長の4人が語り合う。

 本田さんの「人が死なないぐらいのセーフティネットをつくるのが政府の役割ではないか」との問題提起を受け、前川さんは「公的財政支出が少なく家計負担が大きいのが日本の教育の特徴。民主党政権の高校無償化政策は、15〜18歳の学習を親の家計ではなく社会全体で支える学習権保障の考え方が根底にあった」と指摘。赤石さんは「シングルマザーの平均年間就労収入が133万円って許せます?」と問い、同一価値労働同一賃金を通じて男女が子どもを育てながら同じように働ける社会を、と訴えた。

 「ロスジェネ(就職氷河期に社会に出た若者たち)と言われた当時から10年、若者の問題ではなくなった。中年化するにつれ、政策の優先順位ががくっと下がった」と嘆くのは、自らも“アラフォー”となり、昨年はマンション入居申請に落選したという雨宮さん。「希望って何ですか 貧困の中の子ども」のキャンペーン報道をした山崎さんは、「発見・支援の最前線の充実を図れ」「現金給付の拡充による所得保障が急務」など5つの提言を示した。

 貧困・格差の克服へ真剣な議論が続いたが、高校無償化からの朝鮮学校排除や非正規雇用の最底辺に置かれた外国人技能実習生の人権侵害には触れられず、課題が残った。
ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS