2018年05月18日 1526号

【ルポ 日韓連帯ツアー(上)/核・ミサイルの行方を決める民衆の闘い/闘う人びとはあきらめない】

 朝鮮半島の完全非核化へ期待が高まっている。平和条約への環境は整いつつある。この前進を作り出したのは、戦争挑発の朴槿恵(パククネ)腐敗政権を倒した韓国民衆の闘いであった。ZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)は、日韓民衆の連帯を強めようと5月3日〜6日まで韓国を訪れ、原発再稼働やミサイル基地建設強行など国家暴力に立ち向かう人びとと交流した。闘う人びとの思いは同じ。“決してあきらめない”―平和を確かなものにする国際連帯の必要性を改めて感じたツアーだった。

 慶尚北道(キョンサンプクド)星州(ソンジュ)郡の韶成里(ソソンリ)。米軍「サード(高高度ミサイル防衛システム)」基地建設が強行されている村だ。ZENKOがこの村を訪れたのは、5月5日午後5時半を回ったころだった。

沖縄で見た光景と同じ

 人口100人程度の山村。広い道路の両側に警察車両が数百bにわたり並んでいた。40台に近い。千人前後の警察官を運んだことになる。住民・支援者は毎朝、この上り道を座り込みの場所「ジンバッ橋」に通う。闘争の拠点、村の会館から700bはあろうか。橋を渡って1`b、ゴルフ場へ続く。そこがミサイル基地の建設現場だ。工事車両は1台たりとも通さないと住民らが橋のたもとに座り込む。

 その時は10人ほどが座り込んで、歌を歌っていた。それを若い警官が幾重にも取り囲んでいた。警察の指揮者が動いた。ハンドマイクを手に座り込む住民に何かを言った。それから間もなくだった。住民を排除し道を開けた。白いトラックが3台、4台とやってきた。抗議の声をエンジン音がかき消していく。沖縄の高江で、辺野古で見た光景だ。メンバーは皆そう思った。

 「外国人に何が起こるかわからないから」。今回のツアーを準備した代案文化連帯(注)の判断に従い、見守った。車両が通過し、すぐに座り込みが再開。ZENKOは持参した激励バナーを広げアピールした。安倍の改憲・戦争国家づくりとの闘いの報告に拍手が起こる。30分ほどすると再び指揮者が現れた。現場から工事車両、国防部関係者の車両が出てきた。たった一人の女性を20人近い女性警官隊が取り囲んで排除した。

全世界の人が当事者

 サードの星州配備が発表されたのは2016年7月。朴槿恵政権の時だった。ロッテ資本のゴルフ場をミサイル基地にした。17年3月、住民・支援者による座り込みが始まる。文在寅(ムンジェイン)政権になった同年9月7日、800人の住民らに対し警官隊8千人を動員。ミサイル発射台4基を搬入した。住民らの闘いは18時間続いた。同月23日、わが身を焼いて抗議する人が出た。「私たちはあきらめなかった」―。

 ZENKOメンバーは「激動の17年」を記録した映像を見た。続いて18年4月12日の闘いの記録。座り込み150人に対し5千人の警察官。住民らは鋼管パイプを井桁に組み、ネットをかぶり、警察の「ごぼう抜き」に対抗した。少しでも暴力を振るわぬよう警察官の心を鎮める歌を歌って聞かせた。無駄だった。警察は強制排除に出た。力任せの暴力に村の婦人会長イム・スンブンさんの肋骨にひびが入る。5月末、スピーキングツアー来日予定が危ぶまれる。28人が救急搬送される激しい弾圧だった。23日、再び3千人の警察官が動員され、暴力は繰り返された。

 映像の解説は円仏教星州聖地守護非常対策委員会のカン・ヒョンウクさん。円仏教は100年ほど前この地に始まる新しい宗教。日本にも支部がある。サード反対闘争の先頭に立つ。「明日は雨天のため工事は中止かも。ですが地域の人びとは毎朝、雨の日も雪の日も、どんな日にも工事車両を止めるために行動しています」。ミサイル発射台・レーダーの資機材は搬入されたものの地盤に固定する基礎工事には入れない。環境影響評価が終わっていないからだ。今はクラブハウスを兵舎に改修する工事を行っているが、20〜30%程度しか進んでいない。闘いはこれからだ。

 「南北会談終了まで工事の停止を」との住民の要求は無視された。「南北会談は開かれたが、ソソンリにはまだ春は来ていない」と住民はいう。「サード・ミサイル基地の被害者はソソンリの住民だけではありません。朝鮮半島に住む全員が当事者です。東アジアから世界中の人びとの問題です」とカンさんは語った。5月5日、座り込みは421日になった。

 地域の公民館が闘いの拠点。建物横の駐車場に仮設ステージを持つ200人規模の集会が可能なテント広場をつくった。ここで毎夜、ろうそく集会が行われる。

 夜8時過ぎ、黙とうで集会は始まった。「南北会談で合意された最もうれしいことは、空からも陸からもどんな敵対行為もしないことだ。だが、文在寅は試合終了したのにフライを待っている外野手のようだ」。飛んでくるはずのないミサイル。それを待つサード。その滑稽さを言い当てるあいさつに拍手がわく。

村まつりのような集会

 ステージには、支援に駆けつけた教職員組合が上がった。「私たちは見物しているだけではいけない。子どもたちといっしょに、サードがなくなるまで闘う」

 大きな歓声で迎えられたのは地元ソソンリの女性平和の会。カラフルなかつらを身につけ、リズミカルに踊った。「24時間座り込んだ」という男性は自作の詩を朗読し、得意な歌を歌った。続いて登場した男性はサキソフォンを演奏。5月8日の「父母の日」にちなんで、古い演歌を吹く。続く男性も演歌を熱唱。村まつりの雰囲気だ。

 毎日、国家暴力の脅威にさらされながら生活を維持することは容易ではない。「サードのために生活は破壊された。毎日の座り込みで、昨年の農作業は全くできなかった」とカン・ヒョンウクさんは、村人の置かれた状況を代弁した。「いつも大量の警察がやってくることがトラウマになっている」。そんな日常のなかで、ろうそく集会が果たしている役割は大きい。

 ZENKOメンバーもステージに上がった。「地方議会から政治を変える」と京都府向日市(むこう)市議杉谷伸夫さんや大阪府枚方(ひらかた)市議予定候補松田久子さん、同寝屋川市議予定候補大同敏博さんがスピーチ。辺野古新基地建設反対闘争の中で歌われている『座り込めここへ』を披露し、共感と歓迎の拍手を受けた。

 闘いは明るく楽しく。勝つまであきらめない。日本の反基地、反原発の闘いが身につけてきたことは、韓国の闘いの中でも息づいていた。

 *  *  *  *

 「サードは再検討」と公約していた文在寅。公約実現には民衆の闘いの後押しが必要だ。原発政策の公約も同じだ。「韓国の原発が事故を起こしたら、被害はどこで出ますか」。そんな反原発活動家の問いかけは、国際連帯の闘いが必要だとわからせてくれる。基地も原発も全世界の人びとが当事者だ。

 ZENKOは反原発、超高圧送電塔反対の現場にも行った。そこにもあきらめず闘う人びとがいた。(続く)

(注)代案文化連帯は、文化運動、民主主義運動、労働運動を進め、グローバル資本主義のオルタナティブ(代案)をめざす団体。ZENKOとは20年近く交流を続けている。

スピーキングツアー案内

今こそ対話で東アジアに平和を! ZENKO日韓連帯スピーキングツアー

5月20日(日) 東京集会 13:30〜 池上会館・展示ホール
5月22日(火) 札幌集会 18:30〜 かでる2.7・610会議室
5月24日(木) 沖縄集会 19:00〜 船員会館 第1・2会議室
5月26日(土) 広島集会 14:00〜 合人社ウェンディ・ひとまちプラザ・4階研修室A
5月27日(日) 大阪集会 13:30〜 天王寺区民センター・ホール

主催 ZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)





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